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2006 年12 月27 日

B型肝炎訴訟最高裁判決(H18.6.16)

 判例時報を眺めていたら、気づいたので、改めて読み直してみた。

 乳幼児期に受けた集団予防接種や集団ツベルクリン反応検査によってB型肝炎ウイルスに感染しB型肝炎を発症したとして国に対して損害賠償を求めていた事件で、最高裁第二小法廷は、集団予防接種等とウイルス感染の因果関係を肯定し、かつ、予防接種から訴え提起時までに20年以上を経過していたのにも関わらず除斥期間経過による請求権消滅も否定した。

 本事案では、B型肝炎ウイルス感染の原因が集団予防接種等にあると認めうる直接の証拠もなく、原告らの集団予防接種等で他に同ウイルスに感染した者が存在するという証明もなく(それどころか、ある原告については、同じ接種を受けた者について調査したところ、協力の得られた者については感染者はなかった。)、B型肝炎ウイルスの感染源の特定もできず、そればかりか、B型肝炎ウイルス感染経路は集団予防接種等以外にも複数あり得、しかも原告らの家族の中には過去にB型肝炎ウイルスに感染した者が存在したという。したがって、本件の1審地裁判決のように、因果関係を否定するのはやむを得ないものとも思われる事案であった。それにもかかわらず、2審高裁判決も、最高裁判決も、因果関係を肯定した。これは、特筆に値する。翻って考えるに、自分自身、この事案に接したら、被害者救済の必要性は感じつつも、因果関係を肯定するのにためらわれた。そんな自分の因果関係に対する厳格な(消極的な)姿勢の反省も必要だ。

 もっとも、被害救済のために因果関係をある意味で緩やかにとらえる傾向は、ルンバール事件判決(最高裁第二昭和50.10.24)以来存したところでもあり、何も本件だけが特別なのものではないのであろう。しかし、それにしても、近時の最高裁の被害救済の傾向を象徴する事件だ。

 もっとも、考えようによっては、本件にしても、ルンバール事件にしても、国を被告とする事件であるから、国を敗訴させたところで、それは国民の税金によって救済されるのだから、本件事案解決のための政策判断とも考えられる。被告が民間企業の場合とは、因果関係の捉え方も代わるのかも知れない。

投稿者:ゆかわat 04 :52| ビジネス | コメント(0 )

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