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2008 年01 月27 日

開浄水場休止差止訴訟

 京都府宇治市に開(ひらき)浄水場という水道施設がある。地下水を水源とする浄水施設だ。宇治市では、それを休止して天ヶ瀬ダムを水源とする府営水道に切り替える計画だ。その理由は、原水の水質悪化と浄水場が老朽化していて更新費がかかることだとされている。それに対して、地元住民は開浄水場休止に反対して訴訟提起に踏み切った。

 住民の言い分は次のとおりだ。

 原水の水質悪化というが、それはもう何年も前からのことなのに、それを今まで黙っておいて、いきなり休止の理由とするのはおかしい。
 水質悪化というが、浄水後の水質は水道法の水質基準をクリアしている。原水の水質を問題にするのなら、府営水道だって同じだ。
 更新費がかかるというが、つい最近エアレーション装置を設置したばかりじゃないか。それに古い施設は他にもいくつもある。どうして開浄水場だけ休止するというのか。
 そもそも開浄水場は簡易水道事業として始まったものを住民の力で宇治市に移管してこれまで維持してきたものだ。それを住民に黙って廃止を決めて、それを議会に報告して承認を得たから、休止だというのはおかしい。

 地域住民が一番怒っているのは、最後の点だ。飲み水をどうするか、飲み水の水質に問題があるとしたらそれをどうするのが良いのか、そのことに一番利害関係のある住民の意向を聞き、住民とともに結論を出すのが行政・政治のあり方なのに、それを無視して、行政と議会だけで先に廃止ありきを決めるという「決め方」に地域住民は反発しているのだ。
 
 しかも、宇治市を何を血迷ったのか、地域住民が休止差し止めの訴訟・仮処分を提起したのに、その直後に休止の実力行使に出た。どうして住民が訴訟まで踏み切ったということを正面から受け止められないのか。どうして法廷で分かり合えるように説明しようとしないのか。どうしてもう休止と決めたから、後は時期の問題だけで、休止の差止めを求める住民の声を聞こうとしないのか。

 行政の選択肢としては、最悪のカードを切ったとしか思えない。議会で決めたから、議会で予算の承認を得たから年度内にそれを執行する、おそらくそう考えて休止の実力行使に出たのだろう。確かに行政としてそれは「正解」だ。しかし、それは行政の中でしか通用しない「行政の論理」でしかすぎない。その「行政の論理」が住民の反発を招いているということを理解しない最悪の選択だ。

 訴訟は法的話し合いをする場だ。それなのに、喧嘩の場、勝ち負けを決める場としか理解していない。旧態依然とした訴訟観には愕然とする。

「行政の常識」は「民衆の非常識」ということに早く気づいて欲しいものだ。

投稿者:ゆかわat 22 :32| ビジネス | コメント(1 )

◆この記事へのコメント:

◆コメント

ご無沙汰しっぱなしで、穴があったら入りたいくらいです。
やっと最近になって、人と会うことへの恐怖心が薄れてきました。
先生が行政訴訟で相変わらず活躍されている様子を知って、こうしちゃいられない、という気になりました。
こんな場で失礼ですが、一度京都に伺おうと思いますので、先生のご都合を教えていただきたいのですが。
6時ころの新幹線に乗れば、京都ならゆっくりと日帰りできます。
僕は自由の身で、いつでも先生の時間に合わせられます。
毎日早起きして、茅ヶ崎から自由が丘の事務所(物置小屋のようなのを手作りしました)まで通っています。まだリハビリ中ですが。

投稿者: 折山敏夫 URL at 2008 /01 /30 16 :44

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