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2008 年08 月05 日

違法パチスロ機製造の社長逮捕

 8月4日の日経夕刊に「違法パチスロ製造の社長逮捕」との記事が載っていた。
 新聞記事によると、「茨城、愛知など5県警の合同捜査本部は、勝ち負けの確率を調節した違法な集積回路チップを組み込んだパチスロ機を製造販売したとしてパチスロ製造会社社長を商標法違反容疑で逮捕した」という。
 あれ?と思われた人も多いのではないだろうか。「勝ち負けの確率を調節した違法な集積回路チップを組み込んだパチスロ機」が禁止されるのは「著しく客の射幸心をそそるおそれ」があって風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風適法)に反するからだ。だとすれば、風適法違反で逮捕すべきであって、なぜ商標法違反なのか。

 これは、風適法では違法なパチスロ機が禁止されるのは、「風俗営業者」が違法なパチスロ機を「設置して営業」をすることだから、そのようなパチスロ機が実際に設置されて営業が行われないと検挙できない。しかも、不思議なことに、違法なパチスロ機を設置して営業を行うことは禁止されている(法20条1項)が、違法なパチスロ機を設置して営業をしても、それだけでは処罰されないことになっている(罰則の規定には、20条1項違反を処罰する規定はない)。しかも、遊技機を公安委員会の承認を経ずに変更することは処罰されるのに、それよりももっと重大な、違法な遊技機を設置して営業をすることは処罰されない。そのため、遊技機メーカーを罰しようとすると、風適法以外の法律を持ち出さざるを得ない。

 この事件の場合は、たまたま「大手メーカー製の正規商品の商標に似せた印字がされた違法なICチップが取り付けられていた」ため、その大手メーカーの商標権を侵害したという容疑になった。しかし、この新聞記事からすると、「大手メーカー製の正規商品の商標に似せた印字がされた違法なICチップ」はパチスロ機の外部から見えるようには取り付けられていないだろうし、仮に外部からそれが見えたからと言って(たとえば、「インテル内蔵」などと書かれていたとして)、遊技客にしても、パチンコ店にしても、「インテル内蔵」とあることを信頼してそのパチスロ機で遊技したり購入したりということはあり得ないだろう。そうすると、商標法違反というのはよく考えた罪名だと思うが、逮捕された社長からすると釈然としないものが残るだろう。
 しかも、刑罰においても均衡がとれていないように思われる。先に指摘したとおり、違法な遊技機を設置して営業をすることは処罰されないし、無許可営業の刑罰にしても1年以下の懲役または100万円以下の罰金にしかすぎない(風適法49条1項1号)のに、商標法違反は5年以下の懲役または500万円以下の罰金だ。

投稿者:ゆかわat 07 :38| ビジネス | コメント(0 )

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