2009 年04 月17 日
割引料金悪用郵便法違反事件
障害者団体の定期刊行物に適用される割引郵便制度を悪用した郵便法違反事件で、大阪地検特捜部は16日、不正に関与していたとして、郵便法違反の疑いで、「ウイルコ」の会長や「ベスト電器」の担当部長らの取り調べを始めたという記事が産経新聞他に載っていた。新聞紙上で見る限り、容疑は、ウイルコは新生企業と提携し、平成19年2月ごろ、白山会などの刊行物と商品パンフレットを同封したDM計約200万通をベスト電器の顧客に郵送。割引制度の悪用で1通7円(通常は1通120円)に割り引かれ、正規料金との差額計約2億4000万円を不正に免れたということらしい。この記事の内容からすると、罪名は、郵便法八十四条 (料金を免れる罪) 「不法に郵便に関する料金を免れ、又は他人にこれを免れさせた者は、これを三十万円以下の罰金に処する。」違反ということのようだ。
ところで、郵便法は、第三種郵便物の承認を受けると、割引料金が適用されることになる。承認の要件を欠くときは承認が取り消されることになっている。行政法的に考えると、不正であろうと、第三種郵便物の承認を受ければ割引料金が適用される。それを可罰的であるとして処罰するためには、第三種郵便物の承認を不正に取得したことを構成要件とするしかないのではないか。不正であろうと、承認を受けた以上、それが取り消されない限り、割引料金が適用されるのだから、それを不正に料金を免れたというのは困難だと思われるからだ。
なお、郵便法は、郵便法八十三条 (第三種郵便物の承認を偽る罪) 「第三種郵便物の承認のない定期刊行物に第三種郵便物の承認のあることを表す文字を掲げたときは、その定期刊行物の発行人を三十万円以下の罰金に処する。」と八十四条のみを定め、第三種郵便物の不正承認は構成要件とはしなかった。八十三条の規定する、第三種郵便物の承認を受けていないのに承認を受けたかのように装うことは、不正に料金を免れる方法の一つだから、いわば規定する必要もない条文だ。
また、新聞報道によると、ベスト電器はエルグ社の担当者から他社も同種のDMを利用していると説明を受けて違法性の認識なく割引制度を利用したという。そうすると、ベスト電器を共犯で立件するのは困難ではないか。郵便法違反のような行政犯は、殺人・詐欺等の刑法犯と違って明確な違法性の認識が必要だ。第三種郵便の承認を受けていると言われれば、その承認が無効であったとしても、一般には分からないから、明確な違法性の認識がない限り、むしろ適法性の認識の推定が成り立つと言うべきだろう。
しかし、いかに不正に免れた郵便料金が多額で悪質であったとしても、法定刑罰金30万円の犯罪で、天下の特捜が出てきて逮捕というのも、落ち着きの悪い事件だ。政治案件、談合事件に始まり、ライブドアのような市場経済事犯を取り上げ、ついには郵便料金の不正事件までカバーするようになった。
投稿者:ゆかわat 23 :02| ビジネス | コメント(0 )