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2009 年05 月23 日

クラゲになれない差止訴訟

 行政事件訴訟法の平成16年改正で新たに行政処分の差止めの訴えが設けられた。ところが、これが機能しない。
 大阪地裁平成19年11月28日判決(判例地方自治315号73頁)は、タクシー運転手が信号無視で運転免許停止処分(第一処分)を受け、その後再度信号無視をしたため再度の運転免許停止処分(第二処分)を受けることとなり、その旨の意見聴取の通知を受けたことから、第一処分の取消と第二処分の差止めを求めて訴訟を提起したという事案だ。

 大阪地裁は、「一定の処分がされることにより損害を生ずるおそれがある場合であっても、当該損害がその処分の取消しの訴えを提起して執行停止を受けることにより避けることができるような性質、程度のものであるときは重大な損害を生ずるおそれがある場合には該当しないから差止めの訴えは認められない」との一般論を述べた上、第二処分を受けたとしても自動車の運転を伴わない他の業務に就くことまで禁じられないし、第二処分の取消訴訟を提起して執行停止を求めることは妨げられないし、執行停止が認められなくても後に第二処分が取り消されれば別途損害賠償請求訴訟を提起すれば足りるから、差止めの訴えは認められないとした。

 こんな論理を使えば、差止めの訴えが認められるようなケースというのはよほどの事情のある例外的な事案に限られよう。差止めの訴えが法律に明記された(判決でも、差止めの訴えは国民の権利利益の救済の実効性を高めるためにあるとその意義を高く認めている)とはいえ、ただの伝家の宝刀に格上げされてしまった。

 ちなみに、この論理で行けば、第二処分の取消訴訟を提起してその執行停止を申し立てても、本案で勝訴してから損害賠償請求訴訟を提起すれば良いと言って執行停止すら認められないだろう。

 実際、私が経験したところでも、区画整理における仮換地指定処分の執行停止を求めた事案でも、財産的損害だから事後的に損害賠償請求をすれば足りるという理由で簡単に却下された。こういう裁判官は、自分の土地が収用されても、後にお金が返ってくればよいと言うのだろうか。お金が返ってきても先祖代々のその土地は返ってこないのに。

 改正行訴法は着実に骨抜きされつつある。否、まだ骨もできていないか。クラゲにすら骨はあるから、クラゲにもなれない・・・

投稿者:ゆかわat 07 :22| ビジネス | コメント(0 )

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