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2009 年06 月02 日

法科大学院定員2年で1000人減

 ロースクールで行政法を教えることになった身としてはショッキングな記事だ。
 しかし、これは法科大学院協会が3月末までの回答期限で、定員を見直す予定があるかを尋ねるアンケートを実施した結果を発表したもので、それと時期をあわせて中央教育審議会の法科大学院特別委員会が4月に抜本的な定員削減を求める報告書を発表している。ロースクール定員削減を演出する出来レースとしか思えない。

 定員削減の背景は新司法試験合格率の低さにある。しかし、よく分からない。
「定員割れ」したから大学が自主的な判断で定員を削減するのは理解できる。しかし、新司法試験合格率の低さを改善するために国が「定員削減」を求めるのはおかしくはないか。ましてや、専門家(どんな人が「専門家」なのか分からないが)が「大学院の数が多すぎることが問題。合格率が低い学校は助成金を減らしたり、統廃合を検討したりすることも必要になるだろう」と話していると日経新聞の記事には書かれているが、これに至っては全く理解できない。
 合格率が低ければそのロースクールに入学する学生がいなくなるだけで、学生がいなくなればロースクールは閉鎖するか統廃合するしかない。それは経済の法則だろう。しかし、それを国が助成金を減らしたりして操作するというのはどういうことか。結局、それは優秀な学生を集められるネームバリューのある大学のおごりでしかないのではないか。たとえ合格率が低かろうが、勉学の場を求めてそこに来る学生・大学を助成するのが国の役割ではないか。

 そもそもロースクールの役割は新司法試験合格者を輩出することだけなのか。それなら、それこそ法科大学院というのは司法試験予備校ではないか。司法試験合格率の高い低いでロースクールの存在価値を決めるのはやめるべきだ。
 むしろ、ロースクール卒業生に新たな資格を与えればよいではないか。一番求められるのが、国会議員・地方議会議員の被選挙資格とするのはどうか。国会議員は法律を作る。地方議会議員は条例を作る。そのような職責に法解釈のイロハも分かっていない人間が就くことがおかしい。
 だから、「認可」の基準・要件も理解しないまま、日本郵政社長の続投に反対することが「この国の正義だ」という発言をする大臣も出てくる。議員資格にロースクール卒業を必要とすれば、八方丸く収まるのではないだろうか。

投稿者:ゆかわat 15 :06| ビジネス | コメント(4 )

◆この記事へのコメント:

◆コメント

湯川様

素人意見ですみません。

>たとえ合格率が低かろうが、勉学の場を求めてそこに来る学生・大学を助成するのが国の役割ではないか。

この議論では、助成の概念をはっきりさせないで、まるで金銭的な感覚だけで、学校を差別しようとしているような印象を受けます。
教官の資質やモラル、モチベーションの向上、教材の研究、金をかけないで取り組める助成の形というものもあるように思います。
強いて言えば、この不景気の時代に、税金という国費を使って、法曹という未来の高給取りのために、莫大な投資をすることに国民は納得するでしょうか?
先月スタートした裁判員制度に代表されるように国民の大半は司法の世界には至って無関心であります。
それゆえに専門性に秀でて、人間性の豊かな人物に少数精鋭で教育を施すというのは、法曹の世界にとっても合理的で道理的なことではないかと私は思います。

投稿者: 達哉 : at 2009 /06 /02 19 :40

◆コメント

大学時代の恩師(現ロースクール教授)のコメント

ロースクールの件ですが、一言で言えば、いつものように文部科学省の政策の失敗です。
最初に設立を認めすぎたので、今減らしているだけですね。
減らさないと、制度自体つぶされるので。つぶされたら一番困るのが文部科学省の役人です。

とのことです。

投稿者: 達哉 : at 2009 /06 /03 01 :02

◆コメント

某友人のコメント

う〜ん、正直なところ、難しいお話ですね。
しかし、その大学院のカリキュラムなんかが見直されるべきではあるだろうな、とも思います。
カリキュラム、というよりも学生がどの様に受講しているのかな、といった疑問。
 例えば、医学部とか歯学部とか獣医学部においてもやはり『医師国家試験』という目標ラインがあって、それにより多くの合格者を出せるためのシステムというものが一つとしてありますよね。
 そうした他学科のシステムがどうなっていて、それを法科大学院に活かせるところはないのか、などといった視点の持っていきかた、というものもあるんじゃないか、と素人ながらには思います。
 そのシステム作りとかが出来上がる前に、乱立してしまって、今になって壁にぶつかっているのではないでしょうか?
 数を減らす、維持する、という問題ではなくそのシステム作りが先で、あるいはそのシステムを個々で模索しているけれども具体的に出せていない過渡期のようなものなんじゃないかなぁ、とは思います。「実績の悪い大学院は切るよ」というのが純粋な脅しといいますか、ペナルティとしてのみ存在する分については、まぁそれもあり、とは思うのですが、難しいところでしょうね。

投稿者: 達哉 : at 2009 /06 /05 00 :19

◆コメント

これまた某友人からのコメント
ちなみに彼女は現役法学部生です。


法科大学院を作った目的のひとつとして、法曹レベルの向上等を目指すこと等が挙げられると聞いたことがあります。

私はまだまだ一学部生のはしくれですが、大学によって、ローの方針や理念、特色も違うでしょうし、その違いもまた良さだと思います。
ローが始まって4年経ちますが、まだまだ始まったばかりの制度だし、これから長く続くことでしょうから、今の段階で成功だ不成功だとかはまだ言えないと思います。長い目で見ていかねばならないと思います。
何でも始めてみて、不備等が見つかるものです。それなりのリスクは考えて国は動いていると思いますよ。大事な司法権を担う法曹育成。

従来の試験のように誰でも(勉強は命懸けですが)受けられない感じはあります。
例えば今年五月の新司法試験では、ロー出身の人で、今回落ちたら受験資格が無くなる、という方が初めて出ることとなったのですが、この方達のような緊張感は従来は無かったでしょうね。

やはり、最難関の試験と言われるだけ、あると思います。
それを突破した者達が司法の中核となり、国を支えていくことになると考えたら。
司法試験に落ちた時の対策も……裁判所事務官、調査官への挑戦も視野に入れたり、司法書士等の別の資格取得に挑戦するのも必要ですよね。

今のところロー卒業しただけでは世間的にはあまり役にたたないことになるから、自己防衛はしっかりしないと、ですよね。

何れにしろ、法曹への道はいばらの道です。



…こんなところでしょうか。乱筆で御免なさい。

投稿者: 達哉 : at 2009 /06 /05 00 :24

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