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2009 年07 月11 日

障害者の正社員扱いを求める訴訟

我が恩師のブログ(清水ブログ)への返答
http://tateoblog.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-10ec.html
国(厚生労働省職業安定局)が、「障害者雇用ガイドブック」において、障害者の雇用の促進等に関する法律(雇用促進法)43条に係る「常用労働者」の意義に関して正規労働者に限定しない解釈をとっていることについて国家賠償法1条に基づく国家賠償請求をすることができるか。

雇用促進法の具体的な中身(特に雇用促進のためにとっている施策・措置の具体性)をさらに検討してみる必要がありますが、ざっと以下のように考えることはできると思う。

国賠法の「違法」とは、判例上、当該国民に対する関係での公務員の職務上の注意義務違反と解されている。

雇用促進法は、「身体障害者又は知的障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする」(1条)ものですから、障害者の雇用を確保することによって障害者の人権を保障しようとするものと解される。

雇用促進法43条1項は「事業主(常時雇用する労働者(一週間の所定労働時間が、当該事業主の事業所に雇用する通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短く、かつ、厚生労働大臣の定める時間数未満である常時雇用する労働者(以下「短時間労働者」という。)を除く。以下単に「労働者」という。)を雇用する事業主をいい、国及び地方公共団体を除く。以下同じ。)は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合には、その雇用する身体障害者又は知的障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。第四十六条第一項において「法定雇用障害者数」という。)以上であるようにしなければならない。 」と定め、事業主に障害者の雇用義務を定めることによって障害者の雇用を確保しようとしている。

そして、「国及び地方公共団体は、障害者の雇用について事業主その他国民一般の理解を高めるとともに、事業主、障害者その他の関係者に対する援助の措置及び障害者の特性に配慮した職業リハビリテーションの措置を講ずる等障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るために必要な施策を、障害者の福祉に関する施策との有機的な連携を図りつつ総合的かつ効果的に推進するように努めなければならない」(6条)ものとされていますから、国はまさに法43条1項の適切な解釈運用を通して障害者の雇用促進を図るべき義務がある。

ところが、せっかく法が事業主の障害者の雇用義務を定めて障害者の雇用を確保しようとしているのに、法の所管省である厚生労働省(前厚生省)がその解釈を事業主に甘く、障害者に不利に行い(ところで、このように言えるためには、厚生労働省の解釈が明らかに誤りであるか、明らかに立法者意思に反しているか、それとも別の解釈が十分に成り立つにもかかわらず、合理的な理由もなくその解釈をとらなかった場合であることが必要であると思われます。ここは私は労働法や障害者法の専門家ではありませんので分かりません。)、そのような法解釈を障害者雇用ガイドブックに記載して事業主に広く頒布することは、雇用差別される障害者との関係で雇用促進法に基づく国の義務に反するものであって、国賠法1条の違法な行為と評される。

そして、かかる国の違法な解釈運用により特定の障害者が特定の事業主の下で非正規雇用を余儀なくされてきたと評されるものであるとき(国の政策によって個別障害者の雇用差別がなされたと言えるか、因果関係が認められるかは難しいところがあるかもしれませんが、少なくとも事業主の雇用差別を助長しているものであることは明らかでしょう。)は、損害賠償が認められるべきである。

投稿者:ゆかわat 23 :35| ビジネス | コメント(0 )

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