2009 年10 月02 日
住民監査請求と監査
地方自治法に定める住民監査請求を申し立てても、監査委員から監査請求期間を過ぎている等という理由で監査請求を「却下」されることが数多くある。その都度何のための監査委員かと思う。住民監査請求と監査委員の行う財務監査・経営監査・事務監査の関係について考えてみた。監査委員は首長と並ぶ執行機関であり、首長が議会の同意を得て選任する。
4年という長い任期があり、故障・非行がなければ罷免されず、その場合も議会の公聴会と同意がなければ罷免されないという身分保障がある。
財務監査と経営監査の年1回の定期監査は義務を定めたものであって、それ以外にできないわけではない。むしろ、ほとんどの自治体の事務の監査ができるし、金の使い道については資金提供先に対する調査ができる(法199条)。
監査委員は非常に強力な権限を有する機関。それだけに首長と並ぶ説明責任がある。
地方制度調査会からも形骸化であるとか、住民やマスコミからも金の無駄遣いとか批判されるのは、監査委員の強力な権限に対する期待の現れでもある。
住民監査請求(法242条)は、住民が権利として一定の場合に監査を求めることができる場合を定めたものにすぎない。権利ということの意味は、最終的には住民訴訟を提起して裁判所の判断を求めることができるということにある。しかし、訴訟要件としての側面を除けば、その本質は、監査委員の職権発動を促すところにある。
監査委員の説明責任、あるいは監査委員が自治体内部におけるチェック機関であることに照らすならば、監査請求があったことを契機として、監査委員は監査を行うべきである。
とりわけ住民監査請求における監査にあっては、通常の監査にはない、さらに強大な権限が認められている。
@仮の差し止め、A監査手続における相手方同席での意見聴取(調査)、B勧告に基づく措置を講じる義務を監査対象に課する、という非常に強大な権限が認められる。
監査を行うのであれば、住民監査請求に依拠して行うのが、最大の効力を発揮する。監査委員としては、監査請求があったのをきっかけに監査を行うことこそがチェック機関としての監査委員に求められているというべきだ。
それに、監査委員は法律の専門家ではないし、60日以内に監査・勧告をしなければならないから、監査請求の要件審査にそれほど意を用いる必要はない。
それに、監査請求の要件を満たさないのに監査をしたからと言って違法にはならない。本来監査権限があるのだから。
しかし、それに対し、監査をしないと、仮にそれが真実、監査請求の要件を欠いている場合であっても、不服のある住民から監査をしないことについてさらに監査請求がされ、あるいは国賠訴訟を提起されるおそれがある。仮にそのような監査請求や国賠請求が認容されないものであったとしても、裁判所で被告の立場に立つのは、精神的にも負担であるし、弁護士費用を個人的に負担しなければならないという意味でも、その負担は大きい。
したがって、監査委員の説明責任に照らすなら、監査請求の要件審理に時間をかけるよりも、監査をすることこそが求められているというべきだ。
投稿者:ゆかわat 21 :45| ビジネス | コメント(0 )