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2009 年12 月22 日

開浄水場休止差止請求事件京都地裁判決批判(その6)

 水道の利用関係と類似するものとして、公共下水道の利用関係がある。
 下水道法が公共下水道の利用関係をどのように規律しているかというと、公共下水道の供用が開始されると、当該公共下水道の排水区域内の土地の所有者等は必要な排水設備を設置する義務が発生し、下水道を使用するときは使用開始の届出を公共下水道管理者にすると、下水道の使用の事実に基づき下水道法及び条例の規定を根拠として当然に公共下水道の使用料支払義務が発生するものとされる(たとえば、大阪地裁H20.10.1判決・判例地方自治322.43)。下水道法には「契約」を予定した条文はない。
 水道の利用関係もこれと同じに規律することも可能であったが、水道法は、水道の利用関係は「給水契約」によることとした。
 
 どうして法律が上水道と下水道の利用関係をこのように違うように規律したかというと、下水道の利用関係は公衆衛生の観点から一律に処理するのが適当であるのに対して、水道の利用関係は当該地域の事情や需用者の意向に応じてきめ細かい対応を可能とするためである。水道法は、一律ではない、多様な行政サービスに対して需用者が水道料という対価を支払うこととしたのである。

 判決のいうように、水道法が水道事業者は需用者に対して水道水質基準に適合する水を供給するだけの一律の一般的供給義務を負うというのであれば、それは「給水契約」によることなく、下水道の利用関係のように、水道の使用の事実だけに基づいて使用料が発生するとすれば足りたのである。判決は水道利用関係を下水道の利用関係と同視するという誤りを犯した。判決は、水道法が下水道法のような規律をしなかったのは何故かを全く見落としたのである。

投稿者:ゆかわat 22 :57| ビジネス | コメント(0 )

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