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2009 年6 月3 日

ライブドア事件控訴審判決

 判例時報4月1日号(2030号127頁)にライブドア事件控訴審判決が載っていた。
 気になったのは、検察官が公訴事実として「投資事業組合が独立した事業主体ではなく、ライブドアファイナンスのダミーファンドである」と主張していたことである。「ダミー」というのは日常用語としてはよく使うが、分かったような分からないような言葉である。それを法廷で立証命題として主張しているとは思わなかった。曖昧模糊として分かったような言葉で煙にまこうとしたのか。まさしくこの事件の本質を示している。弁護人が「ダミーの意味を明らかにされたい」と釈明を求めたのは至極もっともなことである。それに対して、検察官は「名義上の存在にすぎない」という意味であると釈明した。ところが、判決は、「脱法目的で組成された組合であり、当該取引においてその存在を否定すべきである」と判示した。「名義上の存在」というのは要するに形だけだという意味だ。それに対して、「脱法目的で組成された組合であり、当該取引においてその存在を否定すべきである」というのは、実体はあるが、目的に照らしてその取引では存在を否定するということであるから、形だけだというのとは明らかに異なる。ところが、控訴審判決は、検察官のダミー性を肯定したものだという。論理性のかけらもない。まさしく「ダミー」たる所以である。

 さらに、判決について言えば、会計処理上の潜脱目的を達成するために組成されたという理由でどうして組合の存在を否定することができるのか。税法上の否認や民事上の法人格の否認の法理はあるが、組合の組成目的だけを理由とする連結基準の回避の法理があるのか。弁護人が罪刑法定主義違反だと非難するのももっともだ。しかし、それに対する納得できる理由は何ら示されていない。

 もっとも、これは最初から有罪ありきの国策捜査、国策判決であるから、物言えば唇さびしである。これで裁判員裁判ができるのか。しかし、職業裁判官の裁判もこんな程度であるから、国民も「裁判員になって自分が人を裁けるのか」などと深刻に悩む必要もないか。

投稿者:ゆかわat 20 :56 | ビジネス | コメント(1 )

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