でたらめ裁判
以下は、東京の志賀先生のメールから。
「2年ほど前ですが、ガーンジー島タックス・ヘイブン事件という最判平成21年12月3日(民集63巻10号2283頁)がありました。
損保ジャパンが、英仏海峡に浮かぶガーンジー島にキャプティブ保険子会社を作ったところ、これに対してタックス・ヘイブン対策税制が適用されて、課税が行われました。
納税者側は一審、控訴審で連敗したので、小職が呼び込まれ、鑑定意見書を提出したところ、最高裁で逆転勝訴になったという事件です。
一審、控訴審の判決はひどいものでした。
ガーンジーは、英国王室属領であって、連合王国属領ではありません。ところが、納税者代理人も国側も裁判所も、提出された証拠を読みさえせず、それに気付きませんでした。
その結果、一審判決・原判決とも「ガーンジー島はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国属領であって」という重々しい事実認定から書き始めていました。
ややこしいので省略しますが、この事実認定の誤りは判決に影響を与え得る事実誤認でした。
また、ガーンジー所得税法も英文のままで証拠として提出されていましたが、納税者側代理人も国側訟務検事も裁判所も中身を検討することすらしなかったために、ガーンジーの法人所得税は強行性に欠けるから税とは言えない、と判断されました。
小職は、国際租税の専門家として、そんなばかな!、税法である以上、罰則規定があるはずだと思って眺めてみましたら、当然ながら罰則規定があり、強行性がないなどという一審・原審の事実認定の誤りが明らかにされてしまいました。
それやこれやで最高裁では逆転納税者勝訴となったわけです。
証拠も読まないという非道い裁判の典型例でした。
3.東京地裁の行政事件専門部でさえこのような有様です。
さいたま地裁の越谷支部などは、ほんの数人の裁判官で民事・刑事・行政を扱っており、当然ながら専門的な判断ができるような状態にはありません。
このため、訴額の算定から始まって、訴訟指揮、判決に至るまで、到底裁判とは言えないようないい加減なことが普通に行われています。
この問題は、とりわけ行政事件において顕著であり、それは国側の主張に乗っかっていれば大けがはしないからであるという姑息な理由に過ぎません。」
行訴法は改正されたが、それを取り扱う裁判所はそのままだ。
仏つくって魂入れず。
まさにその通りだ。
それなのに、最高裁も法務省も行訴法のさらなる改正は不要だという。
それもそうか。改正されたところで、使いこなせないのだから。