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2012 年6 月30 日

人材派遣会社法改正に悲鳴

 6月27日日経新聞夕刊の記事から。  10月施行の改正労働者派遣法によって日雇い派遣は原則禁止となるが、主婦や学生はその例外扱いされるので、主婦層による派遣を強める方針だった人材派遣会社もあるようだ。法改正一般においてそうであるように改正派遣法はまだ制度の骨格が決まっただけで、その具体的な内容は政省令で決まる。厚労省部会では、低所得者保護のために日雇い派遣の対象は一定の年収以上の層に限るべきとのことで、世帯年収500万円をそのラインとする方向らしい。しかし、高年収の世帯では日雇い派遣の必要がないとして、年収制限は日雇い派遣を必要とする低所得層の雇用を逆に奪うと猛反発しているという。  低所得層保護の立法目的のはずが、現実は低所得層切り捨ての結果を招きかねず、結局は、法の保護の下にない非合法な派遣が横行することとなるのではないか。派遣労働の需要・必要性とその弊害の除去の調整としての規制の方法・態様をどのように決定するか。問題は、そのような単線の(表面化している表向きの)利益調整にとどまらずに、それらの背景にある、製造業界と派遣業界の利益調整、さらには経産省と厚労省の省益調整、さらには厚労族議員の対立という構造の中で、肝心の派遣労働者の利益が転がされているということだ。それらをすべて調整することが政省令に求められている。ちょうど、先に東京高裁で違法判断を受けた医薬品ネット販売規制の省令にみるように、法律の規制の内容を具体化するのは政省令だ。そして、その利益調整をするのが行政法的にはパブリックコメントだ。パブリックコメントの手続きを見守りたい。

投稿者:ゆかわat 08 :27 | ビジネス | コメント(0 )

2012 年6 月29 日

ある民事訴訟

私が地裁の途中で、それも後半で受任した民事事件がある。
機械代金の請求事件だ。私の依頼者は機械の買主で代金を半分しか支払っていないので、訴訟を提起された。代金を支払わない理由は、機械の不具合、手元不如意。前任の弁護士が機械の瑕疵を主張するが、具体的な瑕疵の主張をなかなかしなかった。それで途中で私が交代してから機械の瑕疵の調査鑑定をさせたが、裁判所は既に時機遅しで鑑定書も見てくれない。

 裁判官は、そもそも訴訟になるまでに瑕疵修補や瑕疵による解除の主張をしたのかを題にする。依頼者は何度もしたが請け合ってくれなかったというのだが、じゃあ、代金の支払い請求を受けて機械の瑕疵があるから契約解除だという主張をしたのか、またそのような主張をしたという書証はあるのかと問い返されると、田舎の会社のおんちゃんだから、契約解除なんかそんな制度すら知らないし、内容証明郵便なんかで瑕疵の主張をするはずもない。電話だけというと、裁判官は瑕疵担保責任の時効が完成しているから、瑕疵の内容は調べる必要はないという。それでやむなく瑕疵の内容の証拠調べをすることもなく結審。判決は案の定依頼者の敗訴。

 でも、鑑定書によれば、機械は設計にそもそも問題があり、生命身体の安全に害を及ぼしかねないものだった。そんな機械の契約は瑕疵だとか言う前に、そもそも錯誤・公序良俗違反で無効ではないか。さらに、調べてみれば、他に流通している台数は2台だけで、そのうちの1台もまともに動いていないということが分かった。そこで、控訴審でそれらを改めて主張したら、控訴審のこの段階でそんなそもそも論をされてもどうしようもない、1審の時点でそういう主張をされていれば調べただろうが、地裁は入口の問題ではねたので、そのような判断も不合理ではないから、1審判決が出たことを前提として控訴審は動かざるを得ないと言われた。

なんかもっともだが、しっくりこない。最初に頼んだ弁護士と地裁で当たった裁判官のくじ運の悪さは自己責任ということか。それが民事訴訟なのだろうか。アメリカのように民事訴訟もゲームだと割り切ればそうなのかもしれないが、民事訴訟というのは、当事者双方が弁論を尽くし、公平な第三者たる裁判官がその争訟を裁断するというものであるはずだ。それが司法のはずだ。少なくとも憲法の予定している司法はそうだし、授業でもそう教えている。
訴訟の迅速化の要請も、主張・証拠の適時提出主義も、司法を否定するようなものであってはならない。それなのに、今の裁判は、全く形骸化していて、およそ司法という理念からはほど遠いものになっていないか。


投稿者:ゆかわat 20 :02 | ビジネス | コメント(0 )

ある修習生との民事裁判についての会話

以前、民裁修習中の修習生と話をした。彼は「この前はひどい弁護士にあたった。これでは依頼者がかわいそうだと思った。準備書面に引用されている証拠の証拠番号は間違っているし、時期も書証と違っているし。それに対して、相手方の陳述書は完璧で反対尋問の必要もないくらい。証拠調べをするまでもなく心証がとれちゃいます。」
おそらく、これが今の裁判官の事件の見方なのだろう。しかし、私からすればこんなものは民事裁判でも何でもない。

主張と証拠が対応しているかどうかをチェックするのは裁判官の仕事であって、代理人の仕事ではない。陳述書なんか、弁護士の作文なのだから、そんなもので心証が取れるはずがないし、そんなもので心証を取るのであれば、準備書面=主張だけで事実認定しているようなもので、証拠裁判主義の否定だ。

今の裁判はおよそ訴訟になっていない。地裁では証人の数は絞って一人か二人しか調べない。それでいて高裁では1回結審でしい証拠調べなんかしない。民事訴訟法改正は1審での審理充実が目的であったはずなのに、ただの拙速主義に陥っている。それでいて、主張整理だの争点整理だのといって弁護士の準備書面だけをもとに争点を絞り込み、証拠調べをして本当の事実が出てきても、もう新しい証拠の取調べはしない。馬鹿じゃないかとしか言いようがない。これが機能するのは弁護士が全部事実関係を把握している場合に限られる。ところが、弁護士は自分の依頼者本人の言い分しか分からない(そもそも依頼者も自分の弁護士に対してであっても自分に不利なことを自発的に伝えるはずもないし、人は自分に関心のあること・都合のいいことしか覚えていないものだ)し、相手方の言い分はもちろんのこと、第三者の言い分は分からない。そんな状況で適切な争点整理ができると思っているのが間違いである。弁護士の準備書面をもとに争点整理をするぐらいなら、早い時期に関係者を集めて、証人尋問なんて形式にとらわれずにとにかく言い分を出させればいい。そうすれば事実関係の全体像が明らかになるし、どの点を詳細に調べるべきかがおのずと絞り込まれる。その方が当事者の納得度ははるかに高いはずだ。


投稿者:ゆかわat 19 :57 | ビジネス | コメント(0 )

2012 年6 月5 日

廃掃法の行政代執行

今日は、午前中、弁護士会の一般法律相談(もっとも、2時間待機中1件も相談はなかった。平和なのか、不景気なのか、人気がないのか。)の後、午後から岐阜地裁で弁論。岐阜駅に少し早めに着いたので、裁判所まで歩いて行った。駅から2kmだから、20分。アーケード街を抜け、昼間の閑散とした飲み屋街(きっと夜になったら高級バーなのだろう)を抜けて、建て替え工事中の裁判所に着く。 事案は廃掃法。依頼者は産廃収集運搬業者だが、運悪く善商に引っかかった。善商に処理を委託した業者として措置命令を受け、審査請求をして争っているうちに代執行となり、その費用について納付命令を受けた。その取消を求める訴訟だ。 行政法や環境法の授業で廃掃法はいつも扱っているが、改めて事案に即して考えると、訳の分からない法律だ。措置命令が出て、期限までに履行しないと、都道府県知事は自ら執行できる。俗にこれを代執行と呼んでいる。そして、都道府県知事は代執行に要した費用を行政代執行法を準用して処分者等に徴収することができる。 措置命令と納付命令については、違法性の承継の問題が有名であり、措置命令の違法性は納付命令には承継されないとされている。 しかし、改めて考えてみると、措置命令と納付命令の要件はかぶっている。何も違法性の承継などということを議論するまでもなく、措置命令が適法になされたことが納付命令の要件となるのではないか。要件がかぶっているから、措置命令の要件といおうが、納付命令の要件といおうが、実は変わらない。 また、措置命令が支障の除去等の措置を講じることだけを求めていて、その履行の方法には複数の方法が考えられるときに、行政庁がその中で最も費用の高い方法を選択して代執行したときでも、処分者等はその費用を負担しなければならないのだろうか、そもそもそのような執行を措置命令の代執行と呼べるのだろうか。それは行政庁による直接執行ではないのか。違法建築物の除却命令のようにその履行方法に選択の余地がない場合と違い、不法投棄された廃棄物の支障の除去については、それこそ残置方式から一部撤去方式から全部撤去方式までさまざまな方法がある。当然費用も変わる。処分者等がそれを行う場合は効率的な方法を選択するが、行政庁が自ら行う場合は、廃掃法の目的以外に、周辺住民の不安の除去から地域再生、さらには地元経済への寄与までいろんな事情を考慮して方法が選択される。国からの補助金をもらうことを考えれば、さらに方法は絞られてくるであろう。そのようないろいろな考慮要素の中で選択された直接施行の費用をすべて処分者等が負担させられるのはおよそ合理性がないであろう。 国はとにかく不法投棄対策を進めるために十分な立法事実の考慮のないまま特定の政策を選択して現行法規を制定した。極めて荒削りの法制度となっている。それを個別事案の利益状況に合わせて、その具体的な制度設計をするのが、環境行政訴訟の役割ではないだろうか。

投稿者:ゆかわat 21 :15 | ビジネス | コメント(0 )

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