2014 年3 月20 日
国保料3億円不適切減免
19日の日経朝刊に「大阪市が城東区で国民健康保険料の不適切な減免があった」との記事が載っていた。「区によると、失業などで収入が激減した際の保険料減免は原則申請時から遡って適用できないのに担当者が遡及して適用できると誤解したことが原因という。」とのことだ。あれ?と思って、大阪市の保険料減免のウェブを見ると、確かに「減免の対象となる保険料は、特別な事由のない限り、申請時において納期限が到来していない保険料となります。」と書かれている。
しかし、その根拠となる条文を見てみると、
大阪市国民健康保険条例
(保険料の減免)
第21条 市長は、災害その他特別の理由により保険料の全額負担に堪えることが困難であると認められる者に対して、保険料を減免することができる。
と定められていて、申請時以前に遡って減免してはいけないとは読めない。あれ?どうして?と思っていたら、はたと気づく。
すでに保険料債権が成立したものについては、国保条例のこの規定によるのではなく、債権についての地方自治法240条3項「普通地方公共団体の長は、債権について、政令の定めるところにより、(略)当該債権に係る債務の免除をすることができる。」の規定に基づかなければならないということだということに思いあたる。地方自治法施行令171条の5〜7に徴収猶予や履行延期の特約をした上で債務免除することができるという厳格な法的規律が定められており、それに基づかなければならない。
なかなか難しいものだ。
投稿者:ゆかわat 22 :49 | ビジネス | コメント(0 )
日経新聞3月19日朝刊の大機小機「原発再稼働と経常収支」
「原発再稼働を主張する根拠として挙げられるのが、火力発電用の化石燃料の輸入増加である。資源エネルギー庁による火力発電の追加コストは年間約3.6兆円とされる。我が国では、原発停止で発電コストが上がったために貿易収支が赤字になり、経常収支も悪化したと信じられている。ところが、法政大学の小黒一正准教授の分析では、震災以降、石油や液化天然ガスの総輸入量はほとんど増えていない。数量があまり変化していないのだから、経常収支の悪化の主因は円安と鉱物燃料価格の高騰であり、原発停止は関係ないのではないかというのだ。(略)
分かっていることを整理すると、原発が再稼働すれば、経常収支が3兆円前後改善するが、それは経常収支を底上げするだけで経常収支のトレンドを変えるほどの影響はないということになる。
トレンドが変わらないとすると、原発を再稼働してもしなくても、日本経済の将来展望は大きくは変わらない。経常収支の悪化傾向が続くなら、原発を再稼働させても経常収支が赤字になる時期を1〜2年ほど先送りするだけだろう。
再稼働による年間3兆円の利得は確かに大きいが、日本経済の死活問題というと言い過ぎだ。原発事故のリスクを考えれば、これぐらいのコストは受け入れ可能という議論も成り立つ。(略)
いずれにしても、原発なしでは日本経済が成り立たないという極端なイメージを作るのはミスリーディングだ。再稼働のコストとベネフィットを慎重に評価することが重要である。」
日経新聞での基調は、原発のコストは火力発電よりも安く、日本経済再生のためには原発再稼働を早期に認めるべきだとするものだ。そこでは福島第1原発事故にみるような原発事故によるコストは、原発コストの中に含まれておらず、原発事故によるコストは市場が負担することのない外部不経済として無視されている。
そのような日経新聞で、このようなもっともな記事が掲載されたのは喜ばしい限りだ。