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2008 年7 月18 日

敦賀市住民集会〜木崎総合レジャー施設  

 敦賀市木崎地区総合レジャー施設事件の和解後の続報
 先の和解に基づき、先日、市・住民協議会(第1回)が開催された。平日の夜7時からとあって、地元からの出席者は少なかったが、冒頭、原告の住民が裁判に踏み切った動機、そして和解をした心情を次のように語った。

「私たちは、この場所が敦賀市都市計画マスタープランで農業保全地域・文教地域に指定されており、自然が豊かで静かな地域であるので、この土地を購入して引っ越してきて、静かに暮らしてきました。ところが、ある日突然、パチンコ店の開発の話が出、大変驚き、イヤだと思った。1市民で一人の主婦でしかない自分が県や市を相手取って訴訟を起こすというのはたやすいことではありません。自分の子供ももう大きくなっているので、我慢しようと思えば我慢できました。しかし、周りには学校もあるし、小さな子供が一杯住んでいます。それなのに、そんな地域にパチンコ店ができるというのは誰が見てもおかしい。何時事故が起こるか分からないし、そんな施設に子供が出入りすることもあるでしょう。そのとき、その子供を退学にすることも簡単なことです。しかし、そんな子供から「じゃあ、なんでここにこんな施設を作ったんだ。どうして反対しなかったんだ。店に出入りした自分たちだけの責任か」と逆に責められたらどう言い訳すればいいのか。今、反対しないと、大変なことになる。そして、そんなふうにして頑張った大人の姿を見てほしいと思って、裁判に踏み切りました。
 施設ができて稼働し始めた今、非常にマナーの悪い車が多いですし、車の騒音も店から聞こえる騒音も大変です。今さら、この周囲が静かな住宅地域ができるとも思えません。
 一人の母親として、争い事は嫌だと思いながらも、裁判を起こしてきましたが、もうできてしまった以上は、これ以上反対していても仕方ありません。これから少しでも住みやすい地域にしていこうという思いで、できたレジャー施設がよい施設となるように建設的で前向きな協議をして、お互い協力していきたいと思います。」

 聞いていて、涙が出そうになった。責めることから、それを受け入れて、よりよいものになるように建設的に協力していくことに切り替えることは、容易なことではない。こういう人たちが一人でも増えていくことが、地方分権の礎となるのだ。tokyo200718



投稿者:ゆかわat 23 :08 | ビジネス | コメント(0 )

2008 年7 月13 日

自治体合同法務研究会・北九州

 毎年、全国の自治体職員の有志で行われる研究会が今年は九州・小倉で開催されたので参加した。
 研究会の全体テーマは「いま、新たな地域自治へ」。自治基本条例が全国の自治体で策定され始めて、策定されるべき自治体は一巡したかなと思われるこの時期、自治基本条例の原点に立ち返りつつ、その深めと実践に向けて全体会と分科会が持たれた。
 印象深かったのは、松下圭一教授が「自治基本条例を作るだけなら、自分の本を読んでくれれば1週間でできる。簡単に作るのではなく、なるべく時間をかけて作ってほしい」と会場発言されたことだ。自治基本条例が制定されたが首長が変わったため施行されることなく終わった事例もショックだったが、自治基本条例に管理職の宣誓義務を入れたために、首長が変わってもかろうじて自治基本条例が生き残っている事例など、自治の現場は一歩前進二歩後退だ。

 これからの自治基本条例に何を盛り込むかというときに、コミュニティ=自治会・町内会・区を取り入れるかどうかという論点がある。木佐教授によると、自治会・町内会は行政末端機関として戦争の遂行にも協力してきた歴史があるために、行政法学ではこれまで触れることがタブーだったが、ニセコ町自治基本条例ではじめて「コミュニティ」を取り上げたということだ。

 私はこれまでの弁護士業務の経験から次のような意見を会場から発言した。

Rei191221



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投稿者:ゆかわat 21 :01 | ビジネス | コメント(0 )

2008 年7 月11 日

生活保護の交通費制限撤回

 7月9日の日経朝刊に「通院する生活保護受給者への通院交通費支給基準を厳格化した厚生労働省の通知をめぐり、同省は、基準を6月に緩和した際に通知は事実上の撤回と明言した大臣の発言録を都道府県などに送り、支給を必要以上に制限しないよう求めることを決めた。北海道滝川市の生活保護不正受給事件を受け、厚労省は4月、通知で支給基準を厳しく制限したが、受給者らの批判を受けて6月、支給基準を緩和した。しかし、その後も追加通知や大臣の発言に従わず支給を制限したままの自治体があるとの苦情が続出していた。」と報道されていた。この件では、TVでも、6月頃、国の基準があいまいなため、自治体が困惑して支給を制限しているかのような報道がなされていたような気がする。

 地方自治の観点からすると、ここでの問題はいくつかある。
 第一に、生活保護費の支給は、生活保護法に基づく法廷受託事務とは言え、自治体の事務である。自治体には、国の処理基準に従うべき義務があるとは言え、自治体の事務である以上、自治体にはその地域の生活保護世帯の実態、公共交通機関の普及状況に照らして、国の処理基準を適切に解釈運用すべき義務がある。したがって、「国の基準があいまいだから」通院交通費を支給できないのではなく、「国の基準があいまいだから」こそ自治体がそれを適切に解釈運用して通院交通費を支給できるのである。議論が本末転倒である。ところが、新聞のスタンスは国批判に向いている。
 第二に、事実上の撤回とする大臣の発言録を自治体に通知する厚労省の姿勢である。まるで、大臣が言っているから仕方なくそうする、と言っているように聞こえる。正式に先の厚労省通知を廃止する旨の通知を出すべきである。そうでないと、大臣が替われば、またぞろ通院交通費支給制限通知が「復活」するのではないか。
 第三に、「大臣が支給制限を緩和したことに従わない自治体はけしからん」とする批判と、「それに対する苦情を国が受け止めたこと」への評価が見受けられることである。国の基準に従わないことに問題があるのではなく、自治体現場が自分の頭で考えずに基準の新設改廃に唯々諾々と従うことに問題があるのである。そして、その是正は自治体現場でなされるべきであるのに、国が是正することに期待していることに問題があるのである。
 国=「お上」意識を払拭することが地方分権である。分権を推進するためには「お上」意識を拭い去ることから始めなければならない。

投稿者:ゆかわat 00 :30 | ビジネス | コメント(0 )

2008 年7 月2 日

敦賀市・木崎地区総合レジャー施設訴訟

 私が敦賀市住民から依頼を受けた、大型レジャー施設建設反対をめぐる敦賀市・福井県相手の訴訟は、7月2日、和解で終わることになりました。和解内容は、市は原告らとともにマスタープランを尊重したまちづくりに努め、原告らとそのための協議を行うことを確認して、原告らは市と県に対する訴えを取り下げるという内容です。

本件訴訟は、大型レジャー施設建設予定地は敦賀市都市計画マスタープランで文教・農地保全ゾーンに指定されていたのに、それを担保する内容の都市計画が定められておらず(本件地域は都市計画法上白地地域となっていました。)、しかも、敦賀市は開発規制のためのまちづくり条例を制定したもののその適用前の間隙をぬって、都市計画マスタープランに反する大型レジャー施設(ぱちんこ店)の開発が行われたため、それに反対する市民・住民が敦賀市に対して開発許可申請の県への進達の差止め・損害賠償を、また福井県に対して開発許可差止め・開発許可取消をそれぞれ求めて提訴したものです。しかし、訴訟係属中に、市は県に対し開発許可申請を進達し、県は開発を許可し、業者による開発工事が完了し、県が工事完了検査済証を交付したために、訴えの利益がなくなってしまいました。

 原告らとしては、市・県が本件地域を文教・農地保全ゾーンに指定する都市計画マスタープランを策定しながら、今回それに反する大型レジャー施設(ぱちんこ店)の開発を認めた責任を明確にしたいという思いが強くありましたが、過去の責任追及よりも、今後の行政と市民との協働によるまちづくりを重視することとして、今回、訴えを取り下げる和解を成立させたものです。

 本件開発は、都市計画マスタープランの限界(それ自体では絵に描いた餅にすぎず、それを実現するためには別に都市計画を定める必要がある)、市と県の間の責任のキャッチボールを露呈するものでした。それだけでなく、本件開発許可には、開発区域のどの範囲が接道要件を満たせばよいのか(開発区域の北側にある主たる公道から開発区域までの範囲で足りるのか、それとも開発区域から南側についても接道要件を満たす必要があるのか)、接道要件にいう道路幅員は開放部のある側溝を含むのか、接道要件を満たしているというためには、接続道路は道路構造令の隅切り要件を満たす必要があるのではないか、開発許可は設計が接道要件を満たしていれば足りるが、開発工事が接道要件を満たすといえるためには契約が権限ある者によって有効になされている必要があるのではないか(工事の前提となる契約=法律行為に瑕疵があるかどうかも開発工事完了検査の対象となるのではないか)という問題を含むものでした。しかし、原告らとしてはこれらの責任追及するだけでは、孫子の代にわたる快適な生活環境を創造することはできません。あるものは受け入れて、共存共栄の道を図りつつ、これ以上のまちの破壊を防ぐという苦渋の選択をしたものです。


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投稿者:ゆかわat 22 :00 | ビジネス | コメント(0 )

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