<< 2009/08 | メイン | 2009/10 >>
2009 年9 月23 日

八ツ場ダム問題

 民主党政権が発足して、政府・国土交通省は八ツ場ダム建設事業の中止を決定した。今日、前原国交大臣が地元視察に訪れたが、地元中止反対派住民は話し合いをボイコットし、群馬県知事・長野原町長の抗議が繰り返し報道されている。
 地元は、ダム建設反対運動からダム建設受入に変わり、今またダム建設中止となったことに揺れている。国の政策によって地元が分裂しいがみ合うのは大変悲しい限りだ。これまで福井空港建設問題でも同じような光景を見てきた。

 毎日TVのTHE/NEWSを見ていたが、キャスターの「ダムが建設されなくても、生活道路建設等が建設されることによる妥協はないのか」との問いに対して、町長はダム建設中止反対の理由を「ダム湖建設がなければ生活再建はない。」と述べた。残った住民はダム完成を前提としての街の復興を思い描いているというが、自分が生まれ育った集落がダム湖の底に沈むなければ、生活再建がないというのは、理解しがたかった。住民の苦悩を知るべきだというが、そのような苦悩を強いてきたのは、これまでの自民党政権であり、公共事業で生計を立ててきた自治体ではなかったか。

 ダム建設に翻弄された57年であったと思うが、大切な国税を無駄にし、新たな災害の危険のあるダム建設が中止でき、自分が生まれ育った集落を水の底に沈めずにすむことができることを前向きにとらえて、翻弄された57年を取り返す生活再建の途を一緒に模索できないのだろうか。補償が少なすぎるというのであれば、無駄なダム工事を止めたお金で補償の上乗せを図ることもできるのではないか。住民の要望を聞きながら、無駄な公共事業の終止符をより良い方向で打てることを祈るばかりだ。
追記をみる

投稿者:ゆかわat 19 :28 | ビジネス | コメント(0 )

障害者団体元職員カラ出張で裏金捻出?

 22日付日経朝刊に、厚生労働省所管の社会福祉法人の元事務局長らが東京出張の交通費・宿泊費名目で架空支出して裏金を捻出していた疑いがあるとの記事が載っていた。
 役所の典型的な「カラ出張」裏金づくりの方法だ。おそらく、この職員は厚生労働省からの天下り職員ではないだろうか。協会の幹部の一人が「自分も何度か出張したことにしてくれと言われて応じた。経理の事務手続き上の問題と思い深く考えなかった」とのコメントが載っていたが、かの幹部も天下り幹部ではないか。お役所でやっていたことだから、自然に応じたのではないか。

 しかし、これが業務上横領で刑事立件されるのであれば、県のカラ出張も業務上横領だ。お役所では皆でやるから立件されず、社会福祉法人では立件されるというのも、変な話だ。「赤信号皆で渡れば怖くない」か?kameoka210916



投稿者:ゆかわat 11 :38 | ビジネス | コメント(0 )

2009 年9 月17 日

新司法試験合格発表

私もこの4月から京都産業大学法科大学院の教授となったが、今年の合格者数はわずか1名で、全国のロースクールの中で最下位に位置づけられてしまった。合格率の悪いロースクールはつぶしてしまえという声も出ている。
 しかし、私の教えてきた学生の中でも、少なくとも2名は確実に合格するだろうと思っていたのが、二人とも不合格だった。しかし、彼らには答案も書いてもらい、授業中や授業後に議論をし、事務所で実際の事案に接して判例・学説を調査してもらい、起案してもらったが、十分に合格者=修習生としてやっていけるだけの能力は身につけていると実感していた。少なくとも前年度合格した学生と能力において劣っているとは思えなかった。それが不合格なのは、本人もそうだが、私自身、全く腑に落ちない。
 選挙で言えば、次点で落選しただけだから、来年こそはトップ当選だと言って励ましている。

 合格率の悪いロースクールはつぶしてしまえ、というのは、全く間違った議論だ。優秀校だけ残すというのは、企業で言ってみれば、大企業だけ残すという話であって、それは健全な企業社会の風土を生み出さない。地方の弱小ロースクールで営まれている学生の勉学の場を残し、それを育んでいくのが、社会的弱者の救済をめざす弁護士会のあり方ではないのか。合格者増反対の声に命を奪われようとしている(ちょっと大袈裟か)のが、本学の置かれた状況だ。

投稿者:ゆかわat 22 :18 | ビジネス | コメント(1 )

2009 年9 月11 日

全く機能しない行政事件訴訟法の執行停止制度

 大阪地裁平成20年10月1日決定(判例地方自治319号41頁)から
 この事案は、第2京阪道路の建設事業のため、土地とその上のエノキの木の収用・明渡しをすることになったのに対して、その収用裁決の取消と明渡の代執行の執行停止を求めた裁判だ。それに対して、大阪地裁は執行停止の申立を却下した。

 申立人の主張は、@自らの経営する保育園の食育・食農保育活動ができなくなる(詳細が分からないが、おそらく収用対象土地を保育園の農園として使っていたのだろう。)、Aエノキの木は古くから農神様として祀られてきた、B第2京阪道路の供用が開始されると周辺住民に健康被害が生じるというものだ。

 それに対して、裁判所が申立を却下した理由を見てみよう。
 まずはじめに、土地を使用収益できなくなることによる損害、エノキの木の収用伐採による損害は財産上の損害として土地収用法の損失の補償ないし損害賠償により填補されるべきものだから、行訴法25条2項の重大な損害に当たらないという。 しかし、そんなことを言えば、人の健康や身体・生命の利益だって、事後的に金銭賠償で足りるという話になってしまう。
 @は、保育園の食育活動は他の土地でも代替可能であり、土地を保有しなくても食育活動が不可能となるものでもなく、その損害は社会通念上行政目的の達成を一時的に犠牲にしてもなお救済しなければならない重大な損害ではないという。 しかし、この理屈で言えば、自宅だって、そこで住まなくても生きていけるだろう、という話になる。
 Aは、エノキの木が文化財等として法令上保護されている証拠はないし、その歴史上学術上の特別の価値が広く一般に承認され又は我が国の国民生活の推移の理解のため欠くことの出来ないものとの認識が確立している疎明もなく、エノキの社会的価値の損失をもって社会通念上行政目的の達成を一時的に犠牲にしてまでもなお救済しなければならない重大な損害ではないという。 こんな事を言えば、守られるのは国宝ぐらいか。
 Bは、第二京阪道路の供用開始により大気汚染や騒音がどの程度悪化し申立人らの生命、健康ないし生活環境に具体的にいかなる態様、程度の被害が生じる蓋然性があるのか具体的な主張や疎明もなく、いまだ抽象的な可能性にとどまる申立人の健康被害ないし環境被害をもって行政目的の達成を一時的に犠牲にしてもなお救済しなければならない重大な損害があるとは認められないという。 要は、自分の健康が害されたり、死なない限り、保障されないという話だ。
(以下続く)

追記をみる

投稿者:ゆかわat 20 :54 | ビジネス | コメント(0 )

2009 年9 月9 日

開浄水場休止差止住民集会

 昨夜、訴訟経過の報告、最終弁論の持ち方を協議するために現地で集会を行った。
 この訴訟は、地下水を水源とする開浄水場を宇治市が休止することに反対する住民がその差し止めを民事訴訟で求めた訴訟だ。次回で結審する。
 浄水場の休止は、住民の生活に直結することであるのに、市水道部は原水の水質が悪化していることを理由に、住民の意向も聞かずに浄水場の休止を決定し、市議会にもその旨説明して休止の議決を得、それから住民に休止の説明をした。ところが、原水の水質悪化というのが根拠のない嘘の説明だということが分かった。ところが、市水道部は一度議会議決も得て決定した休止方針は変更できないとして、今度は施設の老朽化、揚水量の低下、小規模浄水場の経営効率の悪さを休止理由に持ち出してきた。ところが、施設の老朽化というのも揚水量の低下というのも、揚水ポンプのことであって、実は、市は既に開浄水場のポンプ交換のためにポンプを購入していたのにそれを他の浄水場に流用していたことが判明した。それを知って怒った住民に対して、市水道部は謝罪するどころか、住民との話し合いを打ち切って、開浄水場休止のためのバルブの切り替えを強行した。それに反発した住民はバルブ切り替えを実力行使で阻止。そして、訴訟に至った。
 しかも、住民は、訴訟の過程で、浄水場のポンプの交換を自費で行うことを寄附申し出したのに、市は既に休止決定をしたからその決定に反する、予算に反する、というおよそ理由にならない理由で拒否した。
 この経過を振り返るにつけ、市行政・市長部局の横暴さ、市議会のチェック能力の不十分さ、そして行政法の無力さにショックを受ける。
(以下続く)

追記をみる

投稿者:ゆかわat 16 :34 | ビジネス | コメント(0 )

2009 年9 月3 日

大手タクシー業者・国際自動車の許可取消

新聞報道によると、2月9日、労働基準監督署からの通報を受け、国際自動車赤羽営業所に監査を実施し運転者の過労防止違反(拘束時間超過、休息期間不足、乗務距離の最高限度超過)や運転者に対する指導監督違反があり違反点数が44点、これまでの違反点数47点に加算すると合計88点となり、事業許可の取消処分に当たる80点を超えたため、国土交通省関東運輸局は国際自動車の一般乗用旅客自動車運送事業許可を取り消した。

 ところで、タクシー事業は道路運送法に基づく一般乗用旅客自動車運送事業にあたるため、国土交通大臣の許可を要する。許可の取消事由を定めるのは同法40条だ。

第四十条  国土交通大臣は、一般旅客自動車運送事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以内において期間を定めて自動車その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止若しくは事業の停止を命じ、又は許可を取り消すことができる。
一  この法律若しくはこの法律に基づく命令若しくはこれらに基づく処分又は許可若しくは認可に付した条件に違反したとき。
二  正当な理由がないのに許可又は認可を受けた事項を実施しないとき。
三  第七条第一号、第三号又は第四号に該当することとなつたとき。

 しかし、これを見ても、許可取消の理由は分からない。
 先の新聞報道を見ると、関東運輸局による指導監督違反があったという。国の指導監督の根拠条文はおそらく31条だろう。(続く)


追記をみる

投稿者:ゆかわat 21 :13 | ビジネス | コメント(0 )

<< 2009/08 | メイン | 2009/10 >>
このページのトップへ