小田急線「藤子・F・不二雄」ラッピング電車、都条例抵触で運行終了へ
ヤフーを見ていたら、小田急線がドラえもん」をはじめとする藤子・F・不二雄キャラクターを車両内外にあしらった特別電車を運行していたところ、車体へのラッピング装飾が、「東京都屋外広告物条例」に抵触しているとの指摘を受けたことにより運行を終了するという記事があった。事前に許可申請を実施しなかったこと(東京都屋外広告物条例 第23条)、広告物の面積が基準(車体1面の10分の1以下)を超えていたこと(東京都屋外広告物条例 施行規則 第19条)が、条例への抵触内容だという。
東京都屋外広告物条例は、屋外広告物法の実施条例だ。条例が規制対象とする「屋外広告物」とは屋外広告物法で定める「屋外広告物」だと定義されている。法制執務的には正しい定義だが、条例を見ただけでは規制対象が分からないというのは市民の予測可能性を害しており、不親切というべきだろう。
それはさておき、屋外広告物法2条1項によると、「屋外広告物」とは、常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいうと定義されている。しかし、これだけでは、継続性・屋外性・媒体要件を満たす単なる表示がすべて法によって規制される「広告」だということになる。
しかし、この「広告」の定義は日常用語としての「広告」の理解からは離れていて違和感を感じる。ウィキペディアによると「広告とは、非人的メッセージの中に明示された広告主が所定の人々を対象にし、広告目的を達成するために行なう商品・サービスさらにはアイデア(考え方、方針、意見などを意味する)についての情報伝播活動であり、その情報は広告主の、管理可能な広告媒体を通じて広告市場に流されるものである。」とある。社会通念としても、「広告」「屋外広告」は単なる表示ではなく、広告目的を達成するために行う商品・サービス・アイデアについての情報伝播活動をいうというのが一般的理解だ。
そうすると、屋外広告物法により規制される「屋外広告」は日常用語の「広告」よりも広汎にすぎるのではないか。
確かに屋外広告物法の目的である「良好な景観を形成し、若しくは風致を維持し、又は公衆に対する危害を防止するために」は、確かに単なる表示であっても継続性・屋外性・媒体要件を満たす表示は規制しなければならないと考えられるが、違和感を感じる。
ポケモンジェットも、京都市営地下鉄をはじめとするキャラクター電車も、全部「屋外広告物」に当たって、許可を得て行っているのだろうか。
台風15号首都圏直撃
今日は、仮換地指定処分取消訴訟の控訴審弁論で東京高裁に出張。 行きは、新幹線からみる川々があふれんばかりに増水していたが、定刻通りに東京に入れたので、帰りも大丈夫かなと思っていたら、見事に新幹線が停まり、帰宅難民者になってしまった。普段は、台風首都圏直撃なんていうニュースを見ていても、そんなので全国ネットに流れるニュースになるんだ、なんて冷めて見ていたが、自分がその当事者になってしまうとは思ってもみなかった。明日は帰れるかな。駐車場消火器事故
今日の日経夕刊に駐車場消火器事故で元管理人罪状否認との記事が載っていた。起訴状によると、被告人は老朽化した消火器が破裂の危険性のあることを知りながら点検せずに駐車場に放置しておいた結果、駐車場に立ち入った10才の男児が消火器を作動させた結果破裂して傷害を負ったことにより業務上過失致傷にあたるというものだ。検察側の冒頭陳述では、消火器には5年を点検時期の目安とするとの記載があるのにそれを怠ったということが被告人の注意義務違反ということのようだ。
駐車場と消火器とはどうも結びつかないが、特に本件では男児が駐車場内に立ち入って消火器を触ったということだから、駐車場も青空駐車場なのだろう。そうすると、消火器も設置義務があって設置されたものではなく、単にそこに置かれていただけなのだろう。
そうすると、「5年を点検時期の目安とする」というのは自主基準・望ましい基準ということにすぎず、それが消火器の点検義務には結びつかないように思われる。
行政法的考察としてはここで終わるのだが、それでは、消防法上点検義務がない以上、直ちに無罪といえるかというと、そうとは限らないようにも思える。業務上過失致傷罪の成否という見地からすると、消防法によって点検・管理義務が認められなくても、その罪の成立を基礎づけるに足りる注意義務が社会通念によって肯定されるということもあり得るだろう。
確かに古い消火器が放置されていることを認識し、本件駐車場が小学校の通学路に面しており、子ども達が日常的に駐車場内に立ち入ってくることも認識していたとしたら、男児がふざけて消火器をいじって事故を起こす可能性があることは予見できたということが言えるのかも知れない。しかし、駐車場の向かい側に居住する住民にすぎなければ、このような事実を認識していたからと言って、業務上過失致死に問われることはあるまい。そうすると、やはり少なくとも駐車場の管理人が、駐車場内の消火器の管理も委託されていたという関係が必要であろう。法律上の注意義務・管理義務を肯定する以上、その委託関係は、契約に基づく必要があると考えられ、「車を管理するついでに消火器も見といてな」という程度のものでは足りないと考えられる。
記事のリード部分によると、弁護側は「破裂の認識がなかった」という点を争っているようだが、認識がなかったといくら弁解しても、消火器にそのような表示があるとか、広報がなされていたとかいわれたら、認識はあったと認定されてしまいかねない。むしろ、争点は被告人に業務上過失致傷罪の成立を基礎づけるどのような注意義務が認められるのかという点にあるように考えられる。