<< 2015/08 | メイン | 2015/12 >>
2015 年10 月24 日

軽減税率財源まず4000億円?

24日日経朝刊から。「政府与党は2017年4月の消費税増税時に食料品などの税率を低くする軽減税率の財源をつくるため、医療や介護の自己負担額を軽減する新制度導入を見送る。(略)(酒を除く飲食料品に軽減税率を適用する場合に必要な財源は)約1兆円がいる。総合合算制度の見送りによる約4000億円とは別に、新たな財源を探さなくてはならない。」

いかにも食料品等に軽減税率適用のためには社会保障分野を切り捨てなければならず、そうしないためには軽減税率はあきらめろと言わんばかりの姿勢だ。

しかし、食料品に軽減税率を適用すると言っても、現行の消費税率8%を維持するだけの話で、減税でも何でもないのだから、「新たな財源」など必要となるはずがない。こんな「ざれごと」で国民や議会が騙せるとでも思っているのだろうか。

投稿者:ゆかわat 08 :20 | ビジネス | コメント(0 )

2015 年10 月23 日

国と市民社会との新たな緊張関係

 新聞報道によると、政府は16日、経済成長の基盤強化のため企業に積極的な投資を促す官民対話の初会合を開いた。安部首相は「産業界にはさらに一歩踏み込む投資拡大の具体的な見通しを示していただきたい。」と企業側に求めたという。
 
 また、19日には、安部首相の指示を受けて、総務省の携帯電話に関する有識者会議で料金引き下げ策の本格的検討に着手した。その会議の最中に、菅官房長官が定例記者会見で「大手3社が似たような料金設定をしているのは国民から見ても問題だ」と発言して、料金下げを具体的に検討するよう強く促したという。

 20日の日経新聞朝刊の「春秋」には、「民間企業が設定した価格に政府が口をはさむとは、異例中の異例である。業界の値下げ努力が足りないのは確かだが、電電公社のころでもあるまいにいささかお節介なことだ。そういえば政府は、このあいだから企業に投資拡大をしきりに促している。業績がいいのにカネを使わないのがひどく気に触るらしい。思うようにならぬ「民」にじかに切り込むところは携帯問題と同じだろう。統制経済という言葉がチラリと頭をかすめる」と、投資をどうするかは民間の自由であるのに、政府がそんなことまで介入するのかと嘆くような記事もあった。

 思うに、国と市民社会との関係は、伝統的には公権力を行使して市民社会の活動を規制する行政活動のパターンであったのが、給付行政を通して福祉国家を実現することを担うようになり、さらに規制行政だけでは不自由であるので、行政指導、さらには業界団体の自主規制を通して市民社会に介入するようになりってきた。今ではさらにこれが進んで、政府が企業に投資拡大や携帯料金引き下げまで求めるいわば口先介入をするようになってきた。これは行政指導でもないし、自主規制という名の規制でもないし、第三の規制方法か。何よりも最大の問題は、これが企業モラルの向上を求めてよりよき社会をつくるという目的ではなく、政権浮揚・維持策であることだろう。

 そういうと、横浜の傾斜マンション問題で、販売業者・施工業者はそれまでは買い取り・建替えに消極的であったのに、急に販売業者・施工業者の負担で買取り・建替えを行うと表明するようになった。消費者目線で大変喜ばしいことと思っていたが、もしかして、その裏にも、政府の口先介入があったのかしら。

投稿者:ゆかわat 11 :16 | ビジネス | コメント(0 )

2015 年10 月20 日

辺野古埋立取消「違法」宜野湾市民、県を提訴

10月20日夕刊によると、米軍普天間基地の辺野古への移設を巡り、宜野湾市民12人が辺野古埋立承認取消しで基地が固定化し、住民の生存権を脅かすとして県と知事に取消しの無効確認と1億2000万円の損害賠償を求めて提訴したと報道されていた。

国は県知事の取消処分につき行政不服審査法に基づく取消しの審査請求をしたと言うし、市民も行政事件訴訟法に基づく取消しの訴訟を提起した。

しかし、考えてみれば、行政不服審査法に基づく審査請求では、国は、当然、県知事の取消処分を取り消すだろうし、それに対して県は争うことはできないとされている。
ところが、取消し訴訟では、県知事は仮に地裁で敗訴しても、高裁に控訴することもできるし、さらに最高裁に上告手続きをとることもできる。

言ってみれば、今回の市民の提訴によって、県は辺野古問題を訴訟で正式に争うことができるチャンスが与えられた。おそらくは、辺野古移設に反対する市民は、県の側に補助参加していくことになるだろう。辺野古移設賛成派・反対派も入り混じっての訴訟となる。

通常、国の利害又は公共の福祉に重大な関係のある訴訟には、国は指定代理人をつけることが考えられるが、本件の場合は、国は県とは反対の立場で取消処分が違法であると考えているので指定代理人をつけるのではなく、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律4条に基づいて、法廷で国の意見を述べることになるのだろうか。四つ巴の訴訟となることが予想される。

投稿者:ゆかわat 20 :33 | ビジネス | コメント(0 )

2015 年10 月18 日

最近の取扱い事件

最近取り扱っている行政関係事件
?市道を夜間通行したら、朝はなかった道路の陥没があって、それに前輪をとられてバイクが転倒して、負傷した。市は当初は全額賠償すると言っていたのに、今は道路管理に瑕疵はないから市に責任はないという。市に対して損害賠償請求できないか調査中。
?一般廃棄物処理業者(浄化槽汚泥収集運搬業)が収集車両を増車しようとしたら、市から乗車申請は認めないと拒否された。増車申請拒否処分の取消訴訟等ができないか。
?産業廃棄物処理業者(木くず収集運搬・破砕処分)が、不用品業者が引越し等で引き取った廃家具を持ち込んできたので受け入れたのが、無許可営業(一般廃棄物処分業)、廃棄物処理施設無許可設置にあたるという理由で、処分業許可も収集運搬業許可も産業廃棄物処理施設設置許可も取り消された。その後、当該取消処分を理由に、他県での収集運搬業許可も取り消された。取消処分の取消訴訟と執行停止を申し立てた。これから審理が始まるところ。
?所得税更正処分取消訴訟
?土地区画整理組合が違法に土地区画整理事業を遂行したことによる損害賠償を当該組合に求める訴訟
?都市計画事業(下水処理施設拡張建替え)認可処分取消訴訟

投稿者:ゆかわat 20 :47 | ビジネス | コメント(0 )

公法学会

10月17日18日に同志社大学で開催された公法学会第80回総会に参加してきた。
今年のテーマは「現代公法学における権利論」。
憲法の哲学的抽象的議論にはまだまだなじめない。しかし、曽和教授がいみじくの報告の冒頭で述べられたように、「日頃、ロースクールで、実定法の細かい解釈論ばかりしている身」からすると、年に一度くらいはこういうスケールの大きい議論をしないと、どうしても近視眼的になるものだ。

報告の中で、私の関心と合致したのは、北海学園大学大西有二教授の「行政訴訟における権利」報告と、日本大学平祐介助教の「行政不服審査法活用のための不当性審査」報告。

特に前者の報告。取消訴訟で権利が問題となる局面は、処分性、原告適格、そして違法性。日本の訴訟実務では、処分性も原告適格も訴訟要件であって本案の問題ではないとされて、本案に入る前に処分性や原告適格が肯定されないと、本案審理に入らない。しかし、処分性(国民の権利義務を変動させるか)、原告適格(取消を求める法律上の利益があるか)とも、事案の中身に入って、どういう権利が問題となって、権利侵害のおそれがあるかを審理しないと処分性の有無も原告適格の有無も分からない。大西教授も、ドイツ法に依拠しつつ、原告適格も権利侵害=違法性の問題と連続しているから、本案の問題だと喝破された。

そして、違法性=権利侵害については、その本質は行政過程における利益分配の調整の過誤にあるとされる。だからこそ、裁判所は実体審査ではなく手続き審査しかできないということになるのだろうが、この「利益分配の調整の過誤」という視点は、何か使えそうだ。

投稿者:ゆかわat 20 :31 | ビジネス | コメント(0 )

<< 2015/08 | メイン | 2015/12 >>
このページのトップへ