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2007 年7 月29 日

家電リサイクル法

少々古いが、7月25日の日経新聞夕刊に「ヤマダ電機 厳重注意 家電リサイクル法違反で」との記事が載っていた。顧客からリサイクル料金を受け取りながら回収した廃家電の一部が製造業者に引き渡されずに委託業者によって横流しされたのが家電リサイクル法の引渡義務違反にあたるということらしい。

家電リサイクル法は、小売業者は、消費者から廃家電を引き取って製造業者に引き渡さなければならない義務を負っている。この引取・引渡は小売業者自らが行うのが原則だが、法は廃家電の収集運搬を他の者に委託して行うことを許容している。

廃家電は一般廃棄物だから、廃家電の収集運搬を受託する者は一般廃棄物収集運搬業者となる。この事件は、だから、ヤマダ電機の委託した一般廃棄物収集運搬業者が指定された運搬先に廃家電を運搬せずに、国内の中古輸出業者に売却していたということだ。

ヤマダ電機はその事実を把握する術はあったのか。法は、廃掃法にならって、廃家電の処理にあたって管理票(マニフェスト)制度を導入している。小売業者が消費者から廃家電を引き取る際に管理票の写しを交付し、小売業者が製造業者に廃家電を引き渡す際に管理票を交付し、製造業者は小売業者に管理票を回付する。小売業者が一般廃棄物収集運搬業者に委託するときは、これらの管理票の事務も廃棄物収集運搬業者に委託することになる(法45条)から、管理票は小売業者ではなく廃棄物収集運搬業者が保管することになる。

廃棄物収集運搬業者は、廃家電を横流ししたときは、製造業者から管理票の回付を受けることはできないから、廃棄物収集運搬業者の手元に管理票が滞留していたのだろう。
問題は、法は管理票を廃棄物収集運搬業者が小売業者に引き渡すことを予定していないことだ。しかも、小売業者は廃家電の引取・引渡状況を経産省に報告する義務がない。よほどのことがない限り、経産省も小売業者に廃家電の収集運搬状況の報告を求めること(法52条)はしないだろう。しかも、管理票の管理や廃家電の引取・引渡義務違反に罰則はない。そうすると、小売業者は廃棄物収集運搬業者に廃家電を引き渡したら、それで終わりだと思うことになる。

事件の本質はここにある。制度の欠陥に起因することだから、ヤマダ電機を厳重注意して終わる問題ではない。REI190701



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投稿者:ゆかわat 10 :09 | ビジネス | コメント(1 )

2007 年7 月15 日

親子の対話

 少年の非行問題が起きたとき、よく親子の会話がないからだ、と言う。そして、よく親子で話し合ってくださいと言われる。

 ところで、親子の会話・話し合いって何だろう?何を、どうすることが「会話・話し合いをした」ということになるのだろう?
 「今日学校でどうだった?」「こんなことがあったよ」、あるいは「お前、どう思ってるんだ」「すまないことをしたと思っています。」「これからどうするんだ?」「もう二度とこんなことはしません」これで親子の会話、話し合いをしたということになるのだろうか。

 何をしたことが悪かったのか、それをしたことがどうして悪いことなのか、それをするときは悪いことだとは思っていなかったのか、悪いことだと思っていたのにどうしてしてしまったのか、これから同じような場面に遭遇したときはどうするのか、本当にそうできるのか、また同じ過ちをしたときはどう責任をとるのか、親はそれに対してどう関わるのか。
 多分、こんなことを話して、お互いに問題点を共有し理解しあうことが求められているのだろう。

 ところで、こんな会話を、親子で本当にできるのだろうか。
 そもそも大人であっても、そんなことを考えられる人が一体どれだけいるのだろう。ちなみに、私が刑事事件を弁護して、被疑者・被告人となった人に対していきなり法廷で質問して、答えられた人がいただろうか、とふと思ってみたりする。会話をするということの具体的、意味合いを示さないと、誰も本当に会話をすることはできないし、偽物の会話をして「会話・対話」をしたと錯覚するだけではないか。そして、親はあれだけ話したのにどうして分かってもらえないのかと嘆き、子供は何も対話はしていないと親を恨むだけに終わるのではないだろうか。
REI1906



投稿者:ゆかわat 00 :32 | 日記 | コメント(0 )

年金記録第三者委員会〜行政不服審査と苦情処理


年金記録第三者委員会が動き始めた。7月14日付日経朝刊によると、「社会保険庁に再審査を求めていたケースなど36件を審議した結果、15件について記録訂正を認める初めての判断を下した。」という。
社会保険庁に再審査を求めていたというのは不正確で、正確には社会保険審査会に対する年金不支給裁定に対する再審査請求である。これは行政不服審査法、国民年金保険法、厚生年金保険法に基づく行政不服審査だ。それに対して、年金記録第三者委員会と言うのは、総務省に設置された苦情あっせん機関だ。行政法の理解としては、行政処分に対する正式の救済(不服申立て)の手続が社会保険審査会に対する審査請求であって、総務省の苦情あっせんは、まさに単なる苦情処理の手続に過ぎず、正式の行政不服審査手続の俎上に乗っているケースについて苦情処理が口出しすることはないし、普通は、そんなことをしても聞き入れられない。ところが、年金記録救済に関しては、苦情処理が行政不服審査手続よりも優先しているということだから、行政法をかじっている人間としては、驚く他はない。年金に関することは厚生労働省の管轄なのに総務省が口出しをしてその「勧告」に社会保険庁が従うというのも、行政法のルールである行政担任原則破壊だ。しかも、この第三者委員会の「認定」は、過去の社会保険審査会の裁決をも全面的に覆すことになるものだから、裁決の不可争性という行政法のルールも関係ない。要は、国会が決めれば、行政法の理解なんて、そっちのけだ。そうやって考えると、行政法なんて、国会が何もしないときに初めて登場する補欠にすぎないし、行政法は救済の足かせにすぎない。

 しかも、現在、総務省で行政不服審査法の改正の検討をしているが、この年金記録第三者委員会の経験に基づけば、行政不服審査法の改正なんて必要なくて、ただ行政苦情処理制度さえ充実すればそれで良いと言うことになる。これは、私の持論をそのまま実践するものだが、行政不服審査法検討会からすると、甚だ面白くないことだろう。

 さらに言えば、年金記録第三者委員会で救済されることになった人たちは、果たして審査請求の他に第三者委員会に苦情申立をしていたのだろうか。仮に第三者委員会が勝手に記録を審査したのだとすれば、個人情報保護法の見地からも問題がありそうだ。

 いずれにしても、これで明らかになったのは、国民の権利利益の救済のために弁護士の出番になるのは、国会が何もしないときに限られるということであり、その場合も様々な行政法の原理に照らして不可能なことも、国会にかかれば何でもOKということだ。国政選挙も、たまには役に立つ。

投稿者:ゆかわat 00 :23 | ビジネス | コメント(1 )

2007 年7 月8 日

大岩山不法投棄視察

名神高速道路の京都東ICと京都南ICの間に、産廃でできた通称岡田山がある。名神高速をはさんでその向かいには大岩山がある。
7日は、京都弁護士会公害対策・環境保全委員会廃棄物部会の一員として、岡田山・大岩山周辺の廃棄物不法投棄の現場を視察に行った。大岩山はその頂上に大岩神社があり、その参道にもなっている道路の脇に、連々と廃棄物が不法投棄されている。道路のカーブの外側に沿って不法投棄されているごみは、おそらくごみを山積みしたダンプカーを後ろ付してごみを下ろしたものだろう。かと思えば山の斜面に木々の下に捨てられているごみは、どう考えても人の手で放り投げたとは思えないからユンボか何かで捨てたものだろう。ブラウン管テレビや洗濯機、冷蔵庫等廃家電ばかりかと思っていたが、むしろ、冷蔵庫やTVに混じってソファーや、ぬいぐるみや、ゴミ袋に丁寧に入れられたペットボトルごみが多く捨てられていた。これはおそらく建物解体時に残置された家庭ゴミだろうから、建物解体ごみの一部だろう。

これらは、もとをただせば家庭系の不燃ゴミだし、廃家電を回収した業者や建物解体ごみを収集した業者が事業活動に伴って廃棄した事業系ごみだから(もっとも、TV、冷蔵庫、洗濯機の殻は廃プラスチックだから産業廃棄物に当たるが。)、その処理責任は京都市にある。不法投棄された場所が私道上であろうが、民有山林であろうが、はたまたこれを不法投棄した者が廃掃法違反で刑事処分に問われようが、それを理由に京都市が処理責任を免れるものではないと思われるのだが、いかがだろうか。

投稿者:ゆかわat 03 :28 | 日記 | コメント(0 )

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