2011 年12 月29 日
2011 年12 月21 日
低線量被爆報告書 官僚↑専門家↓
19日の日経朝刊に、低線量被爆の健康影響に関する政府の検討作業部会が、先週、年間20ミリシーベルトと設定した政府の避難区域基準を妥当とする報告書をまとめたとの記事が載っていた。 新聞記事によると、内閣府の低線量被爆に関する有識者会議は11月9日に発足、12月15日までに8回の会合を開き、年間20ミリシーベルトの健康リスクは他の発ガン要因のリスクと比べ十分低い、ただし防護の観点から除染の継続は必要だという国際放射線防護委員会の見解をなぞるような報告書だという。 結局は、低線量被爆の影響について信頼できるデータが少ないから、国際放射線防護委員会の見解を科学的に否定する根拠がないということに尽きるにもかかわらず、いかにも政府見解が妥当であるかのようにとりつくろうのは、まさしく官僚テクニックだ。 核問題に関する「専門家」は、福島第一原発事故の発生も「予見」できなければ、その甚大さも「認識」できなかったが、今回もまた意図的に官僚による政治決定を追認するもののようだ。よくそれで未だに「専門家」とか「有識者」という呼称を恥ずかしくもなく使えるものだ。「専門家」としての責任を自戒すべきである。2011 年12 月20 日
浜田簡易裁判所調停
もう年の暮れに近づいてきた。浜田簡易裁判所に申し立てた調停が2回目の期日で成立した。 先週末からの雪で道路事情がどうなっているのかとても心配だったが、冬の中国地方には珍しいことだと思うが、とても暖かく、晴れ渡った1日だった。スタッドレスタイヤをわざわざ注文してレンタカーで来たのに、少しあてが外れた。 いつも思うが、調停はもう不調かと思うことが何度もあって、何とか成立にこぎつける。 今回の事件も、調停前の交渉の時点でお互いの金額差が大きかったところが、第1回調停では相手方代理人からそもそもこれまでの交渉の経過は白紙に戻して一からそもそも論から始めたい(申告農業所得額から乖離した収入認定はできないのではないか、被害者の兄弟は固有の慰謝料の請求権者には該当しないのではないか)と言われ、さらに金額が開き、そこで依頼者と話し合った結果、負担はより大きくなるし、望むところではなくやむを得ず不調にして訴訟に切り替えることを決意したら、相手方がようやく歩み寄る姿勢を見せてくれた。が、第1回の時点では合意には至らず、その後期日間に依頼者と再度話し合ったところ、兄弟とはいえ親子同様の付き合いをしていたのを否定されたのは心外だということで固有の慰謝料を認めないのであれば訴訟提起することを最終的に決意したら、ようやく本日、第2回期日で合意に達した。 申立人にも相手方にも、譲れるものと、絶対譲れないものがある。絶対譲れないものは、最初から駆け引きの対象にはすべきではない。それをも駆け引きの対象にすると、まとまるものもまとまらなくなる。でも、相手方の譲れないものは何かは他方当事者からは見えないのが通常だが、それを見通す能力を身につけることが弁護士には求められる。投稿者:ゆかわat 19 :41 | ビジネス | コメント(0 )
イラン人入学拒否違憲判決
今朝の日経朝刊に、国籍や安全保障上の理由からイラン人男性の入学を許可しなかった東京工業大学の決定につき、法の下の平等を保障する憲法と教育の機会均等を定める教育基本法に反するとして不許可決定を無効とした東京地裁判決(小林久起裁判長)の記事が載っていた。 新聞記事によると、男性はがんの放射線治療を研究するため東工大原子炉工学研究所に入学願書を出したところ、大学はイラン人への核関連分野の教育が行われないよう要請する国連安全保障理事会決議や文科省の指導を踏まえて、男性が安全保障上管理対象となっている技術情報にアクセスする可能性があるとして入学を拒否したという。 感想としては、東工大は私学じゃなかったかな。私人間の憲法の直接適用の問題もあるし、大学の自治の問題もあるし、国家安全保障の問題もあるのに、難民認定による定住性について考慮せずに国籍を不当に重視したのは不合理な差別だという理由(裁量審査過程合理性判断)で不許可決定を違憲無効と判断するのはなかなか難しいのではないかと感じた。大学側の裁量は判決がいうよりも広いのではないか。判決文をみた上でさらに検討してみたい。2011 年12 月10 日
葉山町ごみ処理計画離脱訴訟地裁判決
9日付日経夕刊に「葉山町に賠償命令 ごみ処理計画離脱で地裁」との見出しの記事が載っていた。2市1町で進めていたごみ処理広域化計画から葉山町が離脱したことで計画の見直しを迫られたという理由で横須賀市、三浦市が葉山町に対して約1億4700万円の損害賠償請求訴訟を提起していたのに対し、横浜地裁は葉山町に395万円の支払を命じたという。
記事によると、町長交代で一方的に離脱したのは合意に基づく義務や信義則上の義務に違反したと評されてもやむを得ないというのが理由だ。
葉山町長のウェブでみると、離脱の理由は、大型焼却炉を整備して連続運転するのはごみ処理減量化政策に反する、20年の長期計画は新方式への転換の可能性を閉ざすという政策的問題点の他に、葉山町が分担する不燃ごみ選別施設の立地が確保できないし、周辺住民の理解を得られないし、建設費・維持管理費の負担割合も未定であったという広域化計画策定過程の問題点が指摘されていた。
これらの問題点が2市1町の計画・合意の法的瑕疵を構成するとは思われないが、この計画・合意はそれこそ将来的なごみ処理「計画」にすぎず、その離脱・違反が損害賠償法上の違法を構成するとは思えない。
新聞記事から見る限り、横浜地裁は沖縄企業誘致事件最高裁判決の枠組みに基づいたものと思われるが、同事件は、事業者が町の誘致に沿って工場建設用地を確保し建築確認もとり施設設置の契約もしたという事案であって、事業者の損害を補償すべき事情があったのに対し、葉山町の事案は、行政主体間の計画であって、損害賠償法理になじむのか疑問がある。
結局、1億4700万円の請求に対し395万円の支払というのは、横須賀市、三浦市のメンツをつぶすわけにはいかないという名目上の勝訴判決であって、実質、葉山町の主張を認めたものというべきではなかろうか。
2011 年12 月5 日