<< 2013/11 | メイン | 2014/01 >>
2013 年12 月29 日

「消費増税は使い道の議論を」?

12月26日日経新聞の大機小機から
消費税増税による国民の負担増により景気が悪くなるという見方は税を取るという面しか見ておらず、国民に払う額が増えることを見落としているという。今回の増税は年金や社会保障の充実に使われるのであって、増税で景気が抑えられるという主張は払う面しか考えていない。税金は所得の再分配にすぎないのだから、払った税金はどこかに消えるのではなく、お金は国民の手元に戻っている。現状では国民の負担感が強いのはお金が貯蓄されるばかりで経済に回っていないので、回る回数を増やせば所得が膨らんでお金が増えたと感じる。だから、それを実現するには人々がお金を使わなければならない。そうすれば仕事も増えて暮らしもよくなる。結局、増税論議は負担よりも、集めた税金を国土強靱化、自然エネルギー、介護など国民のためにどう活用するかに集中するべきだという。

しかし、これは消費税増税を所得の再分配という枠組みで見ることで国民に増税を受け入れさせる議論だが、今回の消費税増税の目的は財政再建のため、すなわち国債発行残高を減らして、国債暴落を避けるためのものではなかったか。日記新聞自身がこれまでそのように議論を張っていたのに、今頃になってこんな論調で国民の批判をかわそうとするのは、やや姑息だ。むしろ、増税した税金を財政再建に回さずにばらまきになっていることを批判すべきだろう。

投稿者:ゆかわat 18 :49 | ビジネス | コメント(0 )

2013 年12 月28 日

民主主義の構造改革

今日の日経新聞朝刊の大機小機に「 民主主義の構造改革」という記事が載っていた。

雇用制度、社会保障などと並んで日本の民主主義もまた改革を迫られている。
一つは急速な高齢化によって有権者に占める高齢者の比率が上昇していることから、高齢者向けの政策が優先されるようになる。いわゆるシルバー民主主義だ。シルバー民主主義の下では年金給付を削減したり高齢者医療費の自己負担を引き上げたりすることが難しくなる。これを避けるためには民主主義の制度を変えなければならない、。例えば、年齢別選挙区(選挙区を地区割りではなく年齢別にする)、ドメイン投票(未成年の分を親が代わりに投票する)などのアイデアが出されている。
もう一つは財政赤字だ。「解決の手段が分からない」のではなく、「手段は分かっているが、それ(増税や社会保障費の削減)を政治的に実行できないのである。財政運営への政治関与は赤字バイアスを生む。これを避けるには、財政運営への第三者機関の関与を強めて、政治の影響力を小さくしていくことが必要となる。
民主主義には多くの形態がある。日本の実態に即した民主主義をつくる構造改革が待ったなし、である。

なるほど。その通りだ。
その昔、私がまだ学生の頃、樋口陽一教授の国法学の講義で、ケルゼンとシュミットの話を熱を込めて聞いた記憶がある。ドイツがナチス政権下で民主主義の名の下に独裁政治に陥っていったときにケルゼンが述べた一言「民主主義の船は一旦沈むとも、やがて浮上するだろう。」
現代日本社会でも民主主義は極めて危険な匂いがする。とりわけ日本では民主主義が単なる多数派民主主義として理解されているからだ。多数派民主主義の制限と立憲主義の再構築が必要だ(過激だろうか)。

投稿者:ゆかわat 23 :41 | ビジネス | コメント(0 )

2013 年12 月17 日

工作物責任についての最高裁判例

判例時報2200号63頁掲載の最判平25,7,12(原審が壁面に吹き付けられた石綿が露出している建物が通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになった時点を明らかにしないまま建物の設置保存の瑕疵があるとしたことに審理不尽の違法があるとされた事例)は違和感がある。

事案は、壁面に石綿の付着した建物内で長年勤務していたから中皮腫に罹患したとして建物所有者を訴えた事件で、高裁は、建物の通常有すべき安全性とは客観的なものだから、社会通念上許容されない危険性が客観的に存在すれば瑕疵があるとして所有者の責任を認めた。

それに対して、最高裁は、通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになった時期を確定した上でその時点以降の石綿ふん塵暴露と症状との相当因果関係が必要だと判示しました。

これは、周りから危険だと評価されるようになったときから危険な建物になったというのと同じだ。しかし、瑕疵があるものは瑕疵があるのであって、何時から通常有すべき安全性を欠くことになったかを確定する必要はないと言うのが常識的な理解だと思う。極めて違和感がある。

最高裁は、瑕疵も、通常有すべき安全性も、主観的瑕疵と同様の義務違反的な枠組みでとらえているようだ。

投稿者:ゆかわat 22 :42 | ビジネス | コメント(0 )

2013 年12 月13 日

清酒使用不可知らなかった

 今朝の日経新聞に、富久娘酒造が純米酒などの製造に使用した清酒を原料に表示していなかった問題で、社長が国税当局から指摘を受けるまで純米酒などの原料に清酒を使用してはいけないとは知らなかったと話したとの記事が載っていた。製造段階で香りを調整するために清酒を使用したりするという。

 ところで、この記事を見る限り、原材料表示に清酒を表示しなかったのが問題とされたのか、原材料に清酒を使用したのが問題なのかよく分からないが、国税当局が指摘したというのだから、おそらくは後者の話なのだろう。
私も税法を調べていないが、おそらくは商品たる清酒を原材料として自社内で使用すると、蔵出し税を課税する数量が過小申告になるという趣旨だろう。個人商店の自家消費の問題に近いのだと思われる。しかし、 記事だけを見ると、国税当局が清酒の作り方を指導したというのだから、忘年会や新年会においしい酒を飲みたいと言っているみたいで面白い話だ。

投稿者:ゆかわat 13 :26 | ビジネス | コメント(0 )

2013 年12 月9 日

行政指導30件公表せず

 7日の日経夕刊に、山形県が名産の「だだちゃ豆」のブランドを虚偽表示した業者などに対し景品表示法に基づく行政指導を2009年6月〜今年6月に計30件実施していたが、すぐに改善されたとして公表していなかったという記事が載っていた。日本消費者協会のコメントを引きながら、公表すべきだったのに公表していなかったという論調だが、景品表示法には措置命令や指示の規定はあるが、行政指導の規定などないし、ましてや公表の規定などない。  公表は確かに消費者に注意喚起をする機能は期待できるが、事業者にとって公表は信用にも多大の影響をもたらすものであるから、業者に及ぼす不利益の程度も考慮して公表するかどうかは決められるべきだ。虚偽表示があったとしても、それが改善されれば公表する必要性は乏しいのではないか。虚偽表示があったとして公表すると、いかにもその後も虚偽表示のまま改善されていないかのように受け止められる。公表をするのであれば、公表を取りやめる基準も明確に定めるべきだろう。

投稿者:ゆかわat 08 :18 | ビジネス | コメント(0 )

2013 年12 月6 日

金融庁の変質

金融庁の変質 今朝の日経の大機小機から。 「いまの畑中龍太郎長官の下、金融庁は変質しつつあるように見える」という。要は、今の金融庁は安倍晋三政権の成長戦略を金融面から下支えすることが求められており、これは「金融庁がジャッジ(審判者)として金融機関の行動をチェックするのではなく、コーチ(訓練者)として金融機関の行動を変化させていくことを目指しているといえるだろう。言い換えれば、金融機関・金融市場における経済産業省の役回りである。」「将来に金融機関の経営が悪化した際、自らのコーチに従った金融機関に対し、不良債権の増大や自己資本比率の低下について厳しい是正指導を出せなくなるのではないか」というのだ。 なるほど。自民党政権に戻り、旧来の護送船団方式に逆戻りしたということか。

投稿者:ゆかわat 19 :11 | ビジネス | コメント(0 )

2013 年12 月3 日

諫早湾開門をめぐる二つの裁判

この事件の一番難しいところは、国が諫早湾干拓地潮受堤防を作ったことにより、その開門により、漁業者の中でも諫早湾内で漁業を営む漁業者と湾口及びその近傍部で漁業を営む漁業者との間で利害が対立し、湾内の干拓地の農業者の利益も、さらには堤防後背地の洪水・湛水被害も考えなければならなくなったことだ。

先の2010年の福岡高裁確定高裁判決においても、これらの諸利害の調整は争点となった。しかし、高裁判決では、開門した場合のこれらの被害は証明されていないとされ、他方、堤防による諫早湾口及びその近傍部で漁業を営む漁業者の被害が重大であるという理由で開門を命じた。

ところが、今回の長崎地裁の仮処分決定では、開門によって、確定高裁判決では証明がないとされた湾内の漁業被害や農業被害や湛水被害のおそれがあるとされた。

裁判内容が矛盾しているのはその通りだが、仮処分決定はまだ確定したわけではないので、今後の異議審・抗告審で、裁判内容の調整が行われることになると思割れる。

しかし、今回の仮処分決定が確定することもありえる。なぜそうなるとかというと、両事件は当事者が異なるので、確定判決の既判力が及ばないからだ。その場合はどうなるかというと、国は、諫早湾口及びその近傍部で漁業を営む漁業者との関係では開門義務を負い、諫早湾内の漁業者等との関係では開門してはならない義務を負うことになる。まさに義務の股裂き状態、ジレンマだ。

どうしてこのようなジレンマが生じたかというと、国の事業によって広範な人たちの利害関係が複雑に絡み合った事件を、民事訴訟手続きで解決しようとしたことに原因があるということができる。
民事訴訟手続きは、裁判を申し立てた当事者の間だけで審理してその提出した証拠に基づいて判断することになる。本件のような複雑に利害が絡み合う事件を、特定の当事者の攻防にだけ委ねるのは適切ではない。広く利害関係を有する者も、専門家も参加する、フォーラム型の審理で解決していく必要がある。
そのための一つの方法は、公害紛争処理法の裁定を活用する方策だ。本件が公害といえるのか微妙だが、裁判所が原因裁定を公害等調整委員会に嘱託するのだ。
あるいは、行政事件訴訟法の公法上の法律関係に関する当事者訴訟を活用すれば、その判決には行政庁に対する拘束力があるので、少なくとも義務の股裂き状態は避けられたのではないかと思われる。

しかし、いずれの手続も本件のような複雑な事件を解決する最適な制度とは言えないので、新たな制度設計を今後考えていく必要があると思う。

インタビュー記事が掲載されましたので、こちらもどうぞ。

・諫早湾「水門開けるな」と長崎地裁 「開けろ」という高裁判決との矛盾は解決できるか

http://www.bengo4.com/topics/1001/


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131129-00001001-bengocom-soci


投稿者:ゆかわat 08 :32 | ビジネス | コメント(0 )

<< 2013/11 | メイン | 2014/01 >>
このページのトップへ