2005 年11 月20 日
石原産業フェロシルト事件
新聞報道によれば、石原産業が、11月8日、産業廃棄物である土壌埋め戻し材「フェロシルト」の処理(収集運搬)を無許可業者に委託したとして産業廃棄物処理法違反(委託基準違反)の疑いで、三重県警から強制捜査を受けた。それに対して、石原産業としては、違法ではないと反論している。石原産業の理屈としては、酸化チタン製造工程で発生する使用済み硫酸を、従来、アイアンクレイ(産業廃棄物)として処分していたが、それを再生することで販売可能な土壌埋め戻し材を生成したのであって、土壌埋め戻し材「フェロシルト」がリサイクル製品であることは三重県リサイクル製品利用推進条例でもリサイクル製品として認定を受けているから、フェロシルトの処理を第三者に委託することは産業廃棄物の処理ではないというものだろう。産業廃棄物ではない以上、それを産業廃棄物処理業の許可のない業者に委託したところで、廃掃法違反には当たらない。
それに対して、三重県警の理屈は、酸化チタン製造工程で発生する使用済み硫酸はそれ自体としては産業廃棄物だから、いかにその後のフェロシルトが製品として販売可能であったとしてもそれは産業廃棄物の中間処理によるものにすぎないというものだろう。
新聞報道を見ると、フェロシルトに六価クロムやフッ素という有害物質が検出されたから違法だという論調にも見えるが、廃掃法違反に当たるかどうかは、有害物質が含まれているかどうかではなく、廃棄物かどうかによる。
処理再生することによって有価物となる使用済み硫酸が「廃棄物」に当たるかどうか。使用済み硫酸それ自体を取り出せば「廃棄物」と言う他ないように見えるが、土壌埋め戻し材フェロシルトの原料だという点を強調すれば、廃棄物には該当しない。石原産業に「廃棄物」の認識があったかどうかのみならず、そもそも使用済み硫酸が「廃棄物」かどうか自体が争点だ。
三重県警は、フェロシルトはの売値は1t150円だが、その運送費が3〜4000円だから、実質的に廃棄物の処理ではないかという。確かにこのテクニックは廃棄物処理をごまかす業者によく見られる手口ではある。しかし、それだけでは廃棄物かどうかの判断基準とはならない。そもそも「廃棄物」かどうかというのは、分かったようで、明確な判断基準もひけない極めて曖昧な概念だ。それは、ある人が中古家電製品をもういらないといって捨てたら廃棄物だが、別の人から見ればまだまだ使えるじゃないかといって持って帰れば廃棄物ではないことからも、そう容易な概念ではないことは分かるだろう。そんな曖昧なもの、逆に言えば、公権力がこれが廃棄物だと決めれば「廃棄物」となるような恣意的な解釈が許されるもので、天国と地獄が分かれるというのは、法制度としては不完全だと言わざるを得ない。
投稿者:ゆかわat 22 :07 | ビジネス | コメント(1 ) | トラックバック(1 )
明治安田生命行政処分
明治安田生命が10月28日、今年2回目の行政処分を金融庁から受けた。業務停止命令と業務改善命令だ。私自身が相談を受けた事案でも、不適切な保険金不払いがあった(成人病特約があり、指定の成人病で入院したときは特約保険金が出るという保険であるところ、会社は、入院前に当該成人病であることが判明していて、その治療のために入院したことが保険事由であると主張して、保険金を支払わなかった。しかし、そんな保険事由の解釈は聞いたこともなかったので、訴訟を提起するしかないかと思っていたところ、今年1回目の処分を契機にして社内見直しがされたようで、訴訟をするまでもなく保険金が支払われた。)。それだけに、今回の行政処分も、処分内容としては相当だろうと思う。
ただ、引っかかるのは、新聞報道によると、金融庁が10月中旬に今後の対応について報告を求めたところ、その報告内容に金融庁が憤り、同月24日夜に金融庁幹部が急遽集まり、厳しい処分を下すという結論になり、10月28日に処分発表となったが、その処分内容が予想以上に厳しかったので明治安田生命はそれに慌て、経営体制の大幅刷新は避けられないという判断に至ったというのだ。
何が引っかかるかというと、業務停止命令は明らかに不利益処分だから、行政手続法に照らせば、事前に告知を受け、弁明の機会が付与されるはずであって、金融庁の突然の処分発表で会社が慌てるということは考えられないからだ。
それに、24日夜に金融庁幹部が急遽集まって厳しい処分を下すことにしたというのも、腑に落ちない。不利益処分をするためには、事前に処分基準を作成しておかなければならず(努力義務ではあるが)、「幹部が急遽集まって厳しい処分を下すことにした」などということはあり得ない。不利益処分は、そんなに「恣意的に」行われるものであってはならない。
保険業法を見ても、行政手続法を見ても、保険会社に対する監督処分に行政手続法の適用除外規定はない(それとも、私の見落としだろうか)。行政手続法を無視した、「お上がその時の気分次第で行う」金融行政がいまだにまかり通っているのだとしたら、明治安田生命が恣意的に保険約款を解釈するのもさもありなんと思ってしまう。もしこれが私の誤解だとしたら、誰かご指摘頂きたい。