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2011 年2 月26 日

日弁連主催第4回法科大学院実務家教員研究交流集会

私も「法科大学院実務家教員」の一員であるので、自分の担当している行政法のことだけではだめなのだろうと思い、一念発起して交流集会に参加することにした。東京・四谷は、梅の香り(かな?)が満ちていて、とても新鮮な気分がした。
 分科会と全体会の2部構成となっており、分科会は法曹倫理に関する分科会とローヤリングに関する分科会、全体会は、法科大学院の直接の課題ではないと思われるが、法科大学院における実務導入教育と司法修習の連携のための具体的方策を探ることがそのテーマだった。

 ローヤリングの分科会に参加した。岡山大学におけるローヤリング・クリニックの授業とその成績評価について報告がなされた。ローヤリングとかリーガルクリニックといっても、そんなものには全く携わったことのない私には、一からの勉強だった(よう、そんなんもしらんで「法科大学院実務家教員」なんて名乗っているものだと自分でも思う。)。
 「ローヤリング」と聞くと、ロード・オブ・ザ・リングが真っ先に思い浮かぶが、「仮装事件を用いて、依頼者や相手方との面接・交渉やあるべき紛争解決の方向について考え、体験的に実践する科目」をいう(亀井尚也先生)。
 今日は、その手法ではなく、成績評価が中心的な論点だったらしい。成績評価の基準として「コミュニケーション能力」や「頑張っているか」「MVPは誰か」という視点も大切ではないかということだった。
それを聞きながら、自分の法律相談の経験を振り返りながらふと違和感を感じた。

 市の無料法律相談をしていると、20分の枠の中で終わらせないと、後の相談予定者に迷惑をかけてしまう。これまで20年も弁護士をやっていると、10分間で相談を終わらせろといわれたら、たぶんできるだろう。それも、岡山大学で使っておられる「評価シート」の項目(事実・訴訟物・法律構成・証拠・要求・手段・コスト)の全部について10分でこなすこともできるだろう。でも、そのときは、相談者の話したいことを聞くのではなくて、相談者の話したいことを遮って、自分が聞きたいことを聞くことになる。そうじゃなくて、相談者の話したいことをふんふんと聞いていると、あっという間に1時間経ってしまうこともある。特に離婚の相談なんかを念頭に置いたらそうだろう。これこれの証拠があれば、こういう手続をとれば、これくらいの金銭はとれるでしょうということを10分で相談することはできる。でも、同じ離婚の相談でも、本当に裁判上の離婚が認められるのかと感じれば、離婚原因についてのみ相談するということもあるだろう。中には人生相談で終わって、何の結論も助言もできず、「評価シート」の項目のどれ一つもまともに把握できないまま1時間が経ってしまったという場合もあるだろう。それでも、相談者は、もんもんと悩んでいることをずーっと聞いてもらって、それで少しは明るい顔をして帰ってくれることもある。その場合に、どちらの法律相談がA評価を受けるのだろう?その評価基準は何なのだろう?

 全体会では、法科大学院における実務導入教育が司法修習を念頭に置いたものになっていないため、司法修習開始時の司法修習生の能力が起案能力を中心にして劣っていることを前提にして、弁護士会の取組みの現状及び法科大学院における取組みの可能性について、もっぱら弁護士会サイドから問題提起があった。
 これについても、何か違和感を感じた。
 私は法曹養成問題とは距離を置いてきて、法科大学院設置には全く関わってこなかったし、ここ最近になって行政法を教えるために法科大学院教育に携わるようになったにすぎないので、これまでの経緯は全く分からない。
 しかし、今日の議論は、司法制度改革の基本理念、法科大学院設置の原点がそっちのけになっているのではないか。法科大学院は、それまでの司法修習が裁判官養成・裁判修習中心となっていることの批判を踏まえて、法廷実務家養成にとどまらない新たな法曹養成制度として法科大学院を設置したはずだ。それにもかかわらず、その法科大学院修了生が、自らが批判してきた過去の裁判官養成・裁判修習を中心とした法廷実務家養成に堪えないといって批判しているのが今日の議論なのではないのか。最近の修習生は盗品の近接所持(窃盗犯の否認事件における犯人性を認定する基準の一つ)や殺意の認定基準(殺意の否認事件における殺意認定の基準として、用いた凶器はどのようなものか、攻撃態様はどうか、刺した部位は身体の枢要部か等を考慮するというもの)も知らないという意見があったが、それこそまさに日弁連が打ち破るべき官僚裁判官の発想だったのではないか。それを裁判所よりも弁護士会が率先して声高に主張するのはどういうことなのだろうか。もし弁護士会が実務修習開始時に最低限備えておくべき能力として起案能力が必要だというのであれば、その実務導入教育をすべきなのは、過去の法廷実務家養成のギルド的発想から抜け出せていない弁護士会の仕事であって、法科大学院ではないはずだ。


投稿者:ゆかわat 21 :55 | ビジネス | コメント(0 )

2011 年2 月25 日

復職支援シンポジウム

今日は、金沢で高裁の弁論、富山で地裁の弁論、その合間に富山で別事件の打ち合わせ。金沢の手前でふと車窓の風景を見ると、延々と北陸新幹線の工事が続いており、その向こうには広大な区画整理事業なのか土地改良事業が行われていた。これが国民に雇用と希望を与える現代版・日本版のピラミッド事業なのかな。

 今日一日の締めくくりは、福井で復職支援シンポジウム参加。メンタルヘルス不全や職場復帰問題は、とても緊急の課題のようであり、福井でも夜遅くからの会議なのに立ち見席が出るほどの盛況だった。メンタルヘルス不全から休職した労働者の職場復帰には、主治医のちゃんとした見立てと治療、主治医と産業医との連携、さらには事業所と行政との職場復帰プログラムの協働が不可欠だということを改めて実感した。

そこから私の担当事件を振り返ると、主治医の見立てと治療がそもそも適切だったのかというところから始まり、産業医も労働安全衛生管理よりも宗教勧誘に走り、主治医と産業医は全くあっち向き、事業所もメンタルヘルス不全には何の理解もなく、あげくのはてに労働者がひとり置いてけぼりというのがよく分かった。それなのに、その労働者だけが休職期間満了で失職。裁判所もその状態に何の理解も示さない。あまりに理不尽な現状に憤りを覚える。


投稿者:ゆかわat 23 :15 | ビジネス | コメント(0 )

2011 年2 月18 日

旧かんぽの宿過大評価

 17日の日経新聞に「大阪のゲーム会社ネステージが旧かんぽの宿などの不動産鑑定評価額を不当につり上げ水増し増資していたとして、大阪府警が金融商品取引法違反(偽計)容疑で捜査」という記事が載っていた。
 新聞記事によると、旧かんぽの宿を大江戸温泉物語が3億4000万円で購入したが、収益が見込めないとして東京のコンサル会社に購入価額よりも安い価格で転売し、コンサル会社が13億円の不動産鑑定評価を受けて、ネステージに現物出資して、12億円の株式の第三者割り当てを受けたという。

 一見すると、東京のコンサル会社に安値の物件を高値でつかまされて詐欺の被害にあったように感じるが、ネステージは被害者ではなく容疑者だという。
 水増し増資をして上場廃止を免れたということが問題とされているので、金融商品取引法違反(偽計)というのは有価証券報告書虚偽記載ということだろう。しかし、旧かんぽの宿は、収益を重視して評価すれば3億円あるいはそれ以下の価値となろうが、それこそかつて旧自民党政権時代に鳩山弟総務大臣が旧かんぽの宿の売却にクレームをつけたように、建築価格や固定資産税評価ベースで見れば、10数億円の評価となろう。

 水増し増資をするには現物出資が一番手っ取り早いといわれる所以であるが、物の価格には幅がある。それを警察が「公定」価格を決めてそれより安いから違法だというのは何となくおかしく感じる。

投稿者:ゆかわat 17 :01 | ビジネス | コメント(0 )

2011 年2 月15 日

全国の農業委員会 中立運営を

 15日の日経に「農水省が昨年12月に全国の農業委員会に中立的な運営を徹底するよう求める通知を出していたこと」が分かったとの記事が載っていた。「農地の売買や賃借を許可する業務について透明性を確保し、客観的中立的な判断に基づき適正に実施するものとする」と明記したと言う。ずっと以前からあった「問題」をようやく農水省も認めたのは、遅きに失するが、画期的でもある。

 農地法では農地転用には県知事の許可が必要だ。その許可を得るためには、農業委員会を経なければならない。農業委員会の知事への進達が不可欠なのだ。

 農業委員会は、おそらくどこでもそうだろうが、本会議の前に小委員会の会議があって、そこで許可するかどうかの調査・審議をする。その小委員会には農地転用の「地元」農業委員がメンバーとして加わる。そこの了解を得られないと、本会議にもかけられない。地元農業委員は、やれ工作物はこのような仕様にしろだの、この位置に付け替えろだの、他にもこのような工作物を作れだの、挙げ句の果てには金を要求する(もちろん、表だって「請求」するようなことはないが、地元に挨拶に来なかったのはけしからんだの、どこそこには挨拶に行ったかだのという形で、暗に金員の交付を要求する。)だの好き勝手なことをするのが常套だ。警察の運転免許センターができるときにはこれだけの金が動いただのということが公然と言われているから、警察も取り上げない。訴訟に訴えても、裁判所も農業委員会の肩を持つのが通常だ。知事に進達するかどうかはそもそも処分ではないとされる。私も苦い経験がある。その経験から、審査基準や政指導の限界についての勉強も深めた。
 ようやく一歩前進か。

投稿者:ゆかわat 19 :19 | ビジネス | コメント(0 )

2011 年2 月9 日

答弁食い違い閣僚防戦一方

 今朝の日経新聞から。
 「8日の衆院予算委員会の集中審議では、子ども手当など民主党マニフェストの財源を巡り野党から集中砲火が浴びせられた。首相や閣僚は必死の防戦に回ったが、ちぐはぐな答弁が目立ち、閣内の足並みの乱れが浮き彫りとなった。」

 相変わらずだ。閣僚の答弁がちぐはぐなのが問題ではない。閣僚の答弁がちぐはぐなのを問題だと言うのが問題なのだ。
 各閣僚はその省(それは各省の背景にある利益集団の意向を踏まえた、その道の技術専門官僚の意向でもある)の意向を踏まえて意見を述べるのが当たり前だ。それを国会の審議を経て閣議決定して最終的に各省大臣が実行する。国会も内閣も、国民の諸利益を調整する場だから、委員会審議で各閣僚や首相の答弁が「ちぐはぐ」なのは当然だ。それをすりあわせる場なのだから。それを当然だと理解できないところに、マスメディアが依然として自民党時代から成長できていない、自民党寄り・民主党パッシング体質の現れがみてとれる。

投稿者:ゆかわat 22 :06 | ビジネス | コメント(0 )

留学生不法就労学校ぐるみほう助容疑

 昨夜たまたまTVニュースで、学校が刑事事件の被疑者になっているのを見た。なんだろうと思っていたが、今朝の新聞で分かった。デザイン専門学校の経営者と教職員が留学生の不法就労(資格外活動)の幇助で書類送検の方針が固められたとある。在留資格更新の際に、長時間のアルバイトで授業時間が不足しているのに出席日数を水増しした書類を入管に提出したのが資格外活動の幇助にあたるというのだ。

 なるほど。確かに形の上ではそうだろう。しかし、せっかく日本に勉強しに来ているのに、出席日数不足で単位不認定はかわいそうだから、学生から何とかしてくれと言われたら、何とかしたくなるのが人情だ。
 しかし、これは文科省から何か言われるのなら分かるが、不法就労の幇助だと言われると、何となく違和感がある。とりわけこの学校が留学生の日本語学校だというのなら入管実務にも通じているからまだしも、デザイン専門学校の、しかも教職員が幇助と言われると、出席数が足りているという証明書を作成したことが資格外活動の幇助に該当するなどということを認識し得たのだろうか。
 行政法を担当している私でさえ、後から言われたら「なるほど、それは当然だ。」と思うが、その時点で認識し得ただろうか。

投稿者:ゆかわat 22 :02 | ビジネス | コメント(0 )

弁護士のホームページ

  あるご相談を受けて、相手方の弁護士から来ている損害賠償の請求書を拝見した。
  ちょっとこの請求は法的根拠はないのではないか、無理スジではないか。そう思って、相手の弁護士がどんな弁護士か調べようと思って、その弁護士のホームページを検索してみた。
うーん。私が見てもすばらしい。非のうちどころがない立派なサイトだ。写真にも威厳がある。私ですらこんな先生に依頼したいと思ってしまった。どうりで相手方も遠く離れた県外の弁護士に依頼したはずだ。
さあ、どうしたものか。

投稿者:ゆかわat 16 :24 | ビジネス | コメント(0 )

2011 年2 月6 日

大阪市、ごみ収集民間委託へ

4日(金)日経朝刊に「大阪市、不祥事続きで・・・ ごみ収集、民間委託へ」という記事が載っていた。
しかし、違和感がある。「環境局では金品の着服などの不祥事が相次ぎ(略)組織の抜本的見直しが必要と判断した」という理由で、どうしてごみ収集を民間委託するのか。
不祥事の原因はどこにあるのか。職員採用の問題なのか、組織の問題なのか、それとも業務に不祥事の温床があるのか。不祥事の原因が前2者であるならば、「民間委託する部署の職員は環境局内で配置転換」をしただけでは、不祥事は根絶されない。不祥事の原因が業務内容にあるということでしかあり得ないが、それなら、どうして民間業者が行うごみ収集では不祥事が発生しないのか。
理由と結果が全く合致していない。行政の発表を何の批判もなく受け入れるだけなら、マスメディアの必要はないだろう。ネット広報だけで十分だ。

そもそもごみ収集の民間委託は、経済原則に基づく(民間委託した方が、給与体系の違いや業務効率の違いから安くなる)か、し尿処理業務の代替業務(公共下水道の整備によりし尿処理業者の経営基盤に影響が生じるが、さりとて公共下水道への完全移行が終わらない限りし尿処理業務は継続せざるを得ないので、し尿処理業務の減少をごみ処理業務で補う)の保障でしかあり得ない。不祥事対策を理由とする民間委託は現実的にあり得ないのだ。

投稿者:ゆかわat 20 :15 | ビジネス | コメント(0 )

京都ウトロ地区土地問題

4日(金)の夕刊に「京都ウトロ地区土地問題が解決」との記事が載っていた。

宇治市のウトロ地区に在日韓国人・朝鮮人の人たちの集落がある。その土地を不動産会社が買い取り、立ち退きを求めていた。それを韓国政府が住民支援を決めて、住民が土地を買い取れるよう資金提供をした。ところが、ウォンの価値が下がったため、RCCと滞納市税と不動産会社の金額の折り合いが付かず、こじれていた。

たまたまTVを観ていたら、報道していた。その報道では、こじれの原因は、宇治市が市税の完全回収を求めていることにあるように言われていた。その報道では、市は「滞納市税を減免したら住民の理解が得られない」と言っていたが、「住民」とは誰なのか。違和感があった。

しかし、今般、宇治市は不動産会社が示した納税案を受け入れ、差押えを解除したということだ。とにかく明け渡しの強制執行という事態に陥らずにほっとした。

投稿者:ゆかわat 10 :40 | ビジネス | コメント(0 )

大相撲八百長問題

大相撲が八百長疑惑でまた揺れている。
どのチャンネルを観ても、このニュースばかりだ。
いろんな「偉い」人が出てきて、いろんな高邁な見地からけしからんを繰り返し、ニュースキャスターも八百長けしからんばかりだ。秋田魁新聞社は秋田巡業中止を決定した。春場所も中止が取りざたされている。
一斉の大相撲パッシングだ。
しかし、そうなのか。
大相撲の八百長疑惑は昔からあった。週刊ポストがずっと繰り返してきた。他のマスメディアも、それを知りながら同調報道してこなかった。それがなぜ今頃になって?
石原都知事も「あんなものは昔からあった。」と言っているところだ。
そもそもあれだけの巨体が毎回真剣勝負してきたらすぐに怪我・故障してしまう。
それをあたかも今判明したかのように、一斉にバッシングする。
そんなマスコミの風潮があれば、街頭インタビューを受けたら、誰もがけしからんと言わざるを得ない。
おかしいだろう。こんな「右向け右」の社会は。

八百長があると言おうが言うまいが、八百長を批判するマスメディアがいようがいまいが、大相撲ファンは大相撲の観戦に行ってきたし、テレビも観てきた。「八百長」勝負でも真剣勝負を感じさせるからこれまで大相撲が続いてきたのではないか。それをマスメディアが、国民に興業の視聴の場を提供する媒体であるマスメディアが、勝手に、テレビ放送を中止し、巡業を中止する。視聴者置き去りで、自分たちだけが「正義」を振りかざして。


投稿者:ゆかわat 10 :29 | ビジネス | コメント(0 )

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