<< 2014/03 | メイン | 2014/10 >>
2014 年8 月30 日

前国立市長住基ネット損害賠償訴訟

東京高裁H26.2.26(判例時報2222号47頁)
前市長が住基ネットに違法に接続しなかったために本来必要ではなかった年金受給権者現況届の郵送費等の損害が国立市に生じたとして申し立てられた住民訴訟の第2弾訴訟の控訴審判決で、前市長が住基ネットに接続しなかったことは違法だが、郵送費等の支出そのものは違法ではないとして前市長に対する損害賠償請求を認容した東京地裁判決を取り消して住民の請求を棄却した。

住基ネットへの接続拒否は、私個人的には違法ではないと思うが、住基法の条文を見る限りは、市町村長に接続を拒否する権限は認められておらず、違法と言わざるを得ない。
そして、住基ネットへの接続拒否を違法という限りは、そのような違法な前市長の行為の結果、国立市としては必要のない郵送費等を要したのだから、その損害は賠償してもらうのが筋だと思うのだが、東京高裁判決はそれを否定した。結論は妥当だが、その判断の筋道は直ちにはすとんとは落ちなかった。

しかし、住民訴訟の判断枠組み自体としては、財務会計行為に財務会計法規上の違法があるかどうかで判断することになる。市長が住基ネットに接続拒否することは財務会計行為ではない。郵送費等の支出辞退1に財務会計法規上違法はない。郵送費等の支出の前提行為としての市長の住基ネット接続拒否に違法があるというにすぎず、前提行為の違法は原則として財務会計行為の違法事由を構成しないとするのが、確立した住民訴訟の判断枠組みだ。

その結果、結論としては妥当な判断となったが、やはり直ちにはすとんとは落ちない。

投稿者:ゆかわat 19 :28 | ビジネス | コメント(0 )

2014 年8 月27 日

中間貯蔵2町に150億円

26日の日経朝刊に福島第一原発事故の除染後放射性廃棄物の中間貯蔵施設を巡り、福島県は用地の地権者の生活再建を支援するため150億円を建設候補地の2町に交付することを決めたという記事が載っていた。地権者個人への交付も可能だという。

地権者の間では国が予定する土地の買取価格が事故後の価値で算定され、事故前を下回ることへの不満が強いため、県の負担で価格を上乗せする案が検討されたという。しかし、これはどこでもある話だ。福島の地権者だけ上乗せされる理由にはならないだろう。

知事は自分の土地に住めなくなる地権者の生活再建と地域振興だという。しかし、それはダム建設で水没する集落も同じであって、やはり福島だけ上乗せされる理由にはならないだろう。それに、地域振興はいくら何でもとってつけたような理由だ。

国は地権者個人への給付は難しいとの姿勢を示しているという。公平を重視するとこういう結論にならざるをえない。そうすると、新たに法律を作って、国策として進める事業だから特別の補償をするのだということをうたうしかないのだろう。

投稿者:ゆかわat 08 :21 | ビジネス | コメント(0 )

2014 年8 月25 日

廃家電不正輸出図る 未遂容疑 貿易会社を捜索

8月23日日経夕刊に環境相の許可を受けずに廃家電等をタイに輸出しようとしたとして警視庁が廃棄物処理法違反で家宅捜索をしたという記事が載っていた。

廃棄物処理法10条1項は、一般廃棄物を輸出しようとする者は環境大臣の確認を受けなければならないと定め、同法25条1項12号はこれに違反して一般廃棄物を輸出した者は5年以下の懲役又は1000万円以下の罰金に処するものと定め、同条2項はその未遂罪を処罰するものとしている。重い罪だ。

しかし、被疑者は貿易会社であるから、廃家電を輸出する目的で有償で譲り受けていたのではないか。もしそうであれば、これは立派な有価物であって、廃棄物とは言えないのではないか。

それに、新聞記事では、家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)で回収が義務付けられているエアコンや洗濯機などが金属スクラップの中に大量に紛れ込んでいたという。しかし、金属スクラップは廃棄物ではないし、家電リサイクル法で回収が義務付けられているのは小売業者であって、それ以外の貿易会社ではない。そうすると、ますますこの貿易会社を廃棄物処理法違反で家宅捜索するのは不当ではないかという気がしてくる。

東京税関と環境省と警視庁の合同捜査の実績づくりかとすら思えてしまう。

投稿者:ゆかわat 21 :44 | ビジネス | コメント(0 )

2014 年8 月14 日

まんだらけ写真公開中止

13日夕刊に、まんだらけおもちゃを万引きしたとする男性の顔写真を公開しようとした問題で、やりすぎではないかという批判もあって、公開を取りやめたという記事が載っていた。TV放送などを見ていると、警察から公開すると強迫にあたるおそれもあるから公開しないようにという要請もあったという。

しかし、万引きの被害も回復されないし、万引き犯の氏名も住所も分からない中で、被害回復、再発防止の目的で、万引きの現認写真を公開するのは、やむを得ないのではないか。むしろ、法的な措置もとれない以上、当然の自衛策ではないか。

また、これは自治体が市町村税の支払いを滞納する住民の氏名を公表するのと何ら変わらないのではないか。

投稿者:ゆかわat 13 :14 | ビジネス | コメント(0 )

2014 年8 月12 日

京都地裁3民栂村コート

8月8日の日経新聞朝刊を見てたら、栂村コートがヤフー検索差止請求を棄却した判決と、結婚披露宴解約料条項使用差止請求を棄却した判決が載っていた。

事案の詳細が分からないので正しい評価は分からないが、新聞記事を見る限りでは、検索エンジンで自分の名前で検索したら自分の逮捕記事が検索されて表示されるのは人格権侵害にあたるのではないかと考えられるし、ブライダル業界団体の標準モデルの解約料は高いように感じる。国民の目線に立っていない、業者寄りの判決に見えるが、どうなのだろうか。

投稿者:ゆかわat 21 :23 | ビジネス | コメント(0 )

2014 年8 月5 日

平成26年7月18日最高裁第二小法廷判決

平成26年7月18日、最高裁第二小法廷で「外国人は生活保護法による保護の対象にはならない」という判決が言い渡された。

今回の最高裁判決は、結論だけをみると、「外国人は生活保護法に基づく保護の対象となるものではない」という血も涙もない判決に見えるが、原告の女性は既に生活保護の措置を受けており、いわば行政上の救済がなされており、裁判所が権利救済をしなければならない必要性が必ずしも高くなかった。その意味で、現在の行政実務に及ぼす影響はないし、判例としての価値もなく、そのため最高裁のホームページにも掲載されていない。

今回の最高裁判決は、国が難民条約に加入したにもかかわらず、国会があえて生活保護法だけは国民要件を改正せず、行政措置により実質的に国民と同じ扱いで生活保護措置を実施しているという行政の取扱いを是認している以上、生活保護法の解釈としては外国人は生活保護法に基づく保護の対象とならないと述べたにとどまるものだ。これは「外国人は生活保護法に基づく保護の対象となるものではない」という結論に意味があるのではなく、国会に対して生活保護法の改正を迫るメッセージを発したものと受け止めるべきだ。

そればかりでなく、今回の最高裁判決は、外国人に対する生活保護措置について、それが難民条約加入に基礎を置くものであり、国が実質的に自国民と同じ取扱いをしているという位置づけで行っていることを明らかにして、行政庁の通達に基づく行政措置としての生活保護措置が単なる国の恩恵的措置にとどまるものではないことを明らかにした。これにより、外国人が故なく生活保護措置を拒否されたときは、正面から生活保護申請却下処分の取消しを求めることはだめでも、国家賠償請求によって救済を求めることができることが明らかにされたものと考えられる。

その意味でも、今回の最高裁判決を、生活保護法の対象に永住外国人は含まれないという国際人権法的にも遅れた判決をしたものと消極的にとらえる必要はないと思う。

投稿者:ゆかわat 21 :56 | ビジネス | コメント(0 )

<< 2014/03 | メイン | 2014/10 >>
このページのトップへ