<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2009年08月05日

映画「劔岳点の記」を観て、思うこと

遅ればせながら、新田次郎氏原作の同名映画をやっと観ることができた。
映画では、日本山岳会と陸軍との劔岳初登頂争いを伏線として扱っていたが、原作ではそれほど大きく触れていなかったように思う。
ただ、(映画でも映し出された)当時の新聞記事から、実際には陸軍の威信もかかっていたと思われる。
劔岳を中心とした雄大な山岳風景は、映画ならではの迫力があった。
全編にわたって実写のみで描かれているのも素晴らしい。
また、案内人の宇治長次郎について、その人柄(富山県人の気質)をよく現していると思った。
【立山雄山付近から見た劔岳】(6月下旬撮影)

(#柴崎芳太郎も立山雄山から同じアングルの劔岳を眺めたに違いない)
■■■以下、特に中高年登山愛好家の方々へ■■■
実は、劔岳登頂を機に自分は険しい山行をすぱっと止めた。
県内で代表的三山(劔、立山、薬師)のうち、薬師岳未登頂なのが心残りだが、諦めた。
若気の至り(無謀で怖いもの知らず)というか、とても怖い思いをしたからである。
★行程★
【第一日】高岡→富山(友人と合流)→馬場島→早月尾根中腹(幕営)
【第二日】早月尾根→※1劔岳登頂→劔沢(幕営)
【第三日】劔沢→劔沢雪渓下降→仙人池→黒部川、下ノ廊下→阿曽原温泉(泊)
【第四日】阿曽原温泉→下ノ廊下※2→欅平→宇奈月→魚津(友人と別れる)→帰宅
この行程で、険しい山を諦めるきっかけとなる出来事が2度あった。(※1,※2)

【富山市南部より見た劔岳】(左から、大窓、小窓、三の窓=雲で隠されている)

【※1】劔岳本峰直下のオーバーハング
 早月尾根伝いに順調に高度を稼ぎ、ルートを示す矢印通りに登攀した筈が、何故か頂上直下でオーバーハングを余儀なくされた。
 荷物を担いだまま3点保持の姿勢で夢中で何とか上り詰めた。
 万一、浮き石を掴むか踏むかしたら、一巻の終わりだった。

【※2】雪渓の割れ目(=クレバス<これが一番怖かった)
 最終日、阿曽原温泉から欅平に向かう途中(下ノ廊下)で雪渓を渡ろうとしたら、中央で割れ目が生じていた。
 クレバスは狭い所で幅1m近い>飛び越す自信はあったが、ショックで雪渓が崩落する可能性がある>約10数m下を谷川が流れ、崩落したら命はない。
 折しも対岸から登ってきた登山者が、この雪渓の谷間を高巻きに迂回している最中であった。
 自分たちも高巻きに迂回するのが賢明であった。が、あいにく2人とも明日は通常勤務しなければならない。
 欅平のトロッコ電車に何としても乗らねばならぬ。(知人は東京上野行き列車に乗らねばならぬ)
 今から高巻きしていたら、少なくとも30分〜1時間以上のロスになるだろう。
(雪渓の縁をぐるり高巻く迂回路もきちんとしておらず、険しく厳しそうに見えた)
■■2人で相談の末、(無謀な方へ)心を決めた■■
 →クレバスの端近くまで行ってみる→向こう側へ担いでいたザックを放り投げる。
 これを見ていた高巻き中の登山者が、大声で『危ないから止めろ!』と、どなっている。
 2人相次いで雪渓を全力疾走してクレバスを走り幅跳び。腹ばい姿勢で着地(着雪?着氷?)した。
************************
実に無謀な山行だった。第一、日程に余裕がなかった。
近年、中高年の登山事故が目立つ。↑こんな無茶しないよ、と思われるかも知れない。
だが、険しい山行をやめ、端から登山事故のニュースをみていると、いくつか気になることがある。
★交通機関の進歩★>便利故、逆に時間に縛られていないか?
 →どんな山行でも、例え日帰り登山でも、最低1日の余裕が必要と思う。
★雨具等の進歩★>「ゴア○ックスだから強烈な雨でも大丈夫、安心」なのか?
 →登山用品が発達しても、最後は体力、判断力にかかっているのでないか。
★食糧、嗜好品★>休憩時、仲間で分け合って(自慢して)ないか?
 →非常食はもちろん必要。だが、必要以上は担ぎ上げる重量が増えるだけ。
★携帯電話、無線★>いざとなれば携帯が使える、アマチュア無線も使える、と安易に考えてないか?
 →遭難事故で使われる多大な労力は、金額で賄えるものではない。

投稿者:Ken28at 20:25| ローカルな話題 | コメント(0) | トラックバック(0)

◆この記事へのトラックバックURL:

http://control.onair-blog.jp/util/tb.php?us_no=1061&bl_id=1061&et_id=81709

◆この記事へのコメント:

※必須