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2008年11月30日

あかね空

 内野聖陽と中谷美紀の主演映画である。
 「12月24日通り」で中谷美紀の魅力に魅せられて、見たい映画だった。
 予告映像で「2人の夢、かなうといいな」という言葉があって、豆腐屋の物語だということが分かった。また、中村梅雀演じる同業者が、やくざものを使って店をつぶそうと画策する様子もあって、様々な障害を乗り越えて2人で豆腐屋を繁盛させる根性もののような物語だという予想があった。ただ、大橋の上でどこかの店の夫婦の子供が行方不明になる映像が、どうつながるのか分からなかった。
 物語の始まりが子供の行方不明事件である。子供は人形遣いの口上に誘われてついて行ってしまう。そして、20年後、内野聖陽演じる、京都から出てきた豆腐屋の登場である。「行方不明の子供がもらい子か何かをされて京都へ行ったんだな」と思ってしまった。そして、開店準備の道すがら、豆腐屋に立ち寄って豆腐を買う。その豆腐屋が、子供を亡くした相州屋である。豆腐を手渡すときに、子供の手首にあったアザに気づくのではないかと、ワクワクドキドキしながら見ていたがそんなことはなかった。実はその後も映画のかなり後ろになるまで、私は、主人公の永吉が、行方不明の正吉だと信じていたのである。
 物語は、意外にも、永吉の子供たちの代にパッと転換する。そこで、父と長男との対立の物語が始まるのである。そして、中村梅雀演じる平田屋の画策が本格化する。と思ったら、主人公の永吉はあっけなく死んでしまう。一方、永吉の豆腐屋をつぶすために平田屋に頼まれて登場するやくざの親分が、よく見ると内野聖陽である。2役を演じていたのだ。そして、彼こそが、行方不明の正吉だったことが分かるのである。明快な答えはないが、豆腐屋の前で匂いに記憶を呼び覚ます場面、豆腐を買って、帰り道に大橋の上にたたずむ場面、手首にいつもじゅずをしていること、最後に平田屋をやっつけて、帰り際にじっと手首を見つめる場面などに、40年後の正吉であることが表れている。
 父のあとをしっかりと受け継いで、子供たちが豆腐屋をもり立てて行くであろう予感のうちに物語はエンディングになる。
 美しい物語である。ぜひ、原作を読んでみたい。

投稿者:at Sushiat 06:20| 日記 | コメント(0)

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